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2014年9月26日金曜日

感染対策(インフルエンザ、ノロ、MRSAなど)

<感染対策(インフルエンザ、ノロ、MRSAなど)>
☆インフルエンザ対策
・潜伏期は2日間で、感染性のある期間は発症1-2日前から発症後5-7日の間。潜伏期間から感染力がある。
・迅速検査の感度50-70%、特異度90%なので、検査陰性でも絶対とは言えない。インフルエンザ疑いなら陰性でも感染対策をする。
・インフルエンザ流行期の対策
1)外来では、①呼吸器症状ありならマスク着用、②手洗い励行、③インフルエンザが疑われる場合は待合室を分けるか、診察の順番を工夫する、④感染者用の診察室を用意する、⑤風邪症状がある場合は面会を控えるように指導する
2)入院患者では、①インフルエンザ疑いの段階で個室対応(難しい場合はカーテン隔離)⇒翌朝に発熱続けば迅速検査の指示を出す、②患者が外に出るときはマスク着用、手指衛生を徹底してもらう、③入室時はマスク着用、手指衛生を確実にする。
3)発症した患者では、①飛沫感染対策を発症後7日以上経過したら解除(あるいは発症後5日かつ解熱後2日、ただしこれは学校保健法で世界的には症状出現から5-7日間)
4)暴露した患者では、①発症者とは別の個室で管理(原則5日間→潜伏期間が長くて5日間なので)、個室管理が難しい場合は、ワクチンを接種していなければタミフルの予防投与を行う(病院負担)。
5)職員では、就業制限は原則として発症の日から最低5日間(発症後5日間かつ解熱後2日)→本当は7日間だが、現実的には5日間となる
注意)療養病床でインフルエンザ流行時に個室管理が推奨される場合
・咳やくしゃみの頻度が高い患者
・酸素投与中の患者
・人工呼吸管理下にある患者 


☆ノロウィルス感染対策
・アウトブレイクしやすい理由は、①感染力が強い(100個以下の少ない量でも感染が成立)、②アルコール無効
・ウィルス性胃腸炎(冬季下痢症)はノロウィルスだけではない。アデノウィルスやロタウィルスもあり、感染力は高い。
・診断はPCRがベストだが、迅速検査は感度50%、特異度85%(→陰性でも否定はできない、陽性者のみに対策していると蔓延しやすい)。検査会社の感度、特異度はあてにならない。臨床研究での感度、特異度とは違う。
・潜伏は1-2日間、下痢の症状が消失してから7日間、免疫不全者の場合は2週間はウィルスが排出される
・職員が冬季下痢症になった場合は症状消失まで就業禁止とする(症状消失後7日間は排出があるため拡散防止に努めること)。
・12-3月に急激に生じた嘔気嘔吐、腹痛、水様性下痢の3つのうち2つを満たせばノロウィルスに準じた対策をする。
・吐物、糞便の処理方法(ノロウィルスに限定しない)
1)手袋、エプロン、マスクを着用
2)吐物の周囲2mくらいを汚染範囲と考えて処理する
3)吐物の周囲2mくらいを使い捨てのペーパータオルで外側から内側に向けて静かにふき取る。ふき取ったペーパータオルはビニール袋に入れて感染性廃棄容器に廃棄する。
4)ふきとった場所を1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませたペーパータオルでふき取る(次亜塩素酸Naは金属腐食性があるので後で水拭きをしておく)
5)新しい次亜塩素酸Naをしみ込ませたペーパータオルで靴やスリッパをふき取る
6)汚染範囲の清掃を清掃担当者に依頼する。

☆MRSAを始めとする多剤耐性菌の理想の感染対策
・具体的な感染対策
1)アルコールによる手指消毒を徹底する。
2)感染と保菌は区別せずに個室管理し、入室者はエプロン、手袋、マスク(当然、部屋から出るときはマスクも含め廃棄する)着用。
3)保菌者の手や服にも付着しているが、周りの机など環境表面にも付着している。患者に接しなくても環境表面から付着するため、大部屋の別の患者を診察する時にも逐一アルコール消毒をする。
4)MRSAに効果のある薬剤を終了して48時間以上、もともとMRSAが出た部位および鼻腔のそれぞれが3回連続で培養陰性になれば隔離解除。
5)5分に1回は無意識に顔を触っているので、マスクで伝播を防ぐ目的もあるため、MRSAは空気感染や飛沫感染はしないが、マスクは必要。MRSA保菌者の診察をした69%の確率で汚染される。白衣は毎日洗濯する。
・バクトロバン鼻腔用軟膏2%の塗布方法
用法・用量:通常、適量を1日3回鼻腔内に塗布する。
1)綿棒の先にチューブからあずき粒程度の薬剤をとる。
2)まず、片側の鼻腔内に塗布し、次にもう片方の鼻腔内にも同じ量を塗布する。
3)薬剤を均一に伸ばすため、塗布後、両側の鼻翼の上からよくマッサージする。
注意)MRSA除菌の必要性
・現実的には療養病棟での看取り患者のMRSA除菌はしない。
・急性期ではMRSAの除菌をせずに、患者が死亡した場合敗訴する可能性がある。
「市民病院に入院した患者がMRSA敗血症を発生し、転院先の大学病院で死亡。市民病院の担当医らのMRSA感染予防を怠った過失、当該過失と死亡との因果関係を認めた高裁判決」 福岡高等裁判所平成18年9月14日判決 判例タイムズ1285号234頁


☆多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染対策
・定義はIMP,AMK,CPFXの3剤耐性
・対策は保菌、感染問わずに全例個室で接触感染予防策。
・準MDRP(3剤中2剤に耐性ある場合)も全例個室にするべき。
・G陰性桿菌(緑膿菌、アシネトバクター、セラチア、大腸菌)は毒性が強く、エンドトキシン産生により重症化しやすい。耐性化すると抗菌薬が効かず危険。ERDP、ESBLも含め、多剤耐性グラム陰性桿菌をIMP,CPFX,AMK,CAZ(セフタチジム)のうち2剤耐性(R,I)のものと定義し、個室管理すべき。
・多剤耐性菌が出た時のカルテ記載:ご提出いただきました〇〇検体より院内規定による多剤耐性グラム陰性桿菌が検出されております。接触感染対策の開始をお願いします。
・具体的な感染対策:
1)患者診察、処置前後でのアルコールでの手指衛生の徹底
2)患者さんの使用する器具の固定(聴診器など)
3)患者さんの手指衛生の徹底を指導
4)個室にできるなら、個室管理とし、エプロン+手袋+マスク着用。

cf)多剤耐性菌について
・多剤耐性菌の種類
MRSA
多剤耐性緑膿菌(MDRP)
多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
ESBL産生グラム陰性桿菌
カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)
・日本に限らず訴訟、賠償のNO1はMRSA!→血液培養2セットは必ずとること
・感染症法で全数報告(国、県)が必要な耐性菌
1)VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
2)VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)→日本では1例もない、Laboエラーのことも多い
3)CRE(カルバペネム耐性腸内細菌)
4)MDRA(薬剤耐性アシネトバクター)*
5)MDRP(多剤耐性緑膿菌)やMRSAは報告義務なし
・多剤耐性の定義:
IPM,AMK,CPFX全てにRであれば多剤耐性とする
IPMのMIC>16
AMKのMIC>32
CPFXのMIC>4

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