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2014年9月28日日曜日

HTLV-1について

☆HTLV-1について
・スクリーニングは妊娠初期から中期にかけて行う。スクリーニング検査が陰性なら非感染者となる。
・スクリーニング検査が陽性ならウェスタンブロット法(WB法)を行う。
・WB法が陽性ならキャリアとなる。WB法で判定保留の場合はPCR法を行う。
・スクリーニングで陽性になるのは0.3%、WB法で陽性になるのは51.6%、判定保留は11.7%。
・HTLV-1はRNAウィルスである。
・主な感染経路は母子感染(8割)と性行為感染(2割)。感染力が弱いためこれら以外で感染することはない(子供同士の接触や温泉、散髪、唾液などでは感染しない)。
・3か月以上の母乳栄養では18%に母子感染を起こすが、完全人工栄養でも約3%が母子感染を起こす。
・日本では100万人以上のキャリアがおり、西日本に多い。
・ATL、HAM、ブドウ膜炎を起こす。生涯発生率はATLが5%、HAMが0.3%。
・ATLの発症年齢の中央値は67歳。やや男性に多い。キャリアの生涯発症率は男性に多い。40年以上の持続感染によって起こるため、母子感染でのキャリアで発症する。
・臨床病型は、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に分類される。急性型では末梢血にflower cellと呼ばれる核に切れ込みのある異常リンパ球が出現する。
・臨床症状は、1週間以上の高熱、強い倦怠感、リンパ節腫脹、赤く盛り上がった皮疹、高カルシウム血症に伴う意識障害、肝腫大、脾腫大、種々の日和見感染。
・HTLV-1抗体検査が陽性で、かつサザンブロット法によって血液、皮膚病変、リンパ節病変のHTLV-1感染細胞がモノクロナールに増殖していれば確定診断となる。
・ATLは白血病の中でも予後は著しく不良。
・急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の生存期間中央値はそれぞれ6か月,10か月,24か月,5年以上。4年全生存率はそれぞれ11%,16%,36%,52%。
・ATLへの進展危険因子:男性、ウイルス量、年齢、家族歴、他の疾患治療中のHTLV-1陽性判明
・ATL急性型、リンパ腫型の予後予測因子:Ann Arbor stage,Per-formance Status(PS),年齢,血清Alb値,soluble interleukin-2 receptor(sIL-2R)
・ATLの予後不良因子:PS、好中球減少、血清LDH値、節外病変数、全病変数、化学療法の有無
・ATLの腫瘍性の維持に重要なHTLV-1 bZIP因子(HBZ)を標的とするワクチン療法はHAMやATLの発症予防や病勢制御にも有効な可能性がある。
・くすぶり型や予後不良因子のない慢性型では急性転化するまで経過観察。
・リンパ腫型、急性型、予後不良因子のある慢性型は化学療法、同種造血幹細胞移植、サルベージ療法、分子標的治療。
・抗CCR4抗体(ポテリジオ)は再発、再燃例に対する単剤投与による全有効率50%,生存中央期間13.7か月。
・インターフェロンαと核酸系逆転写酵素阻害薬(nucleoside reverse transcriptase inhibitor:NRTI)のzidovudine(AZT)の併用療法が化学療法よりも有効(5年全生存率46%vs20%)
・HAMは0~50歳代の発症(平均40歳)が多い。女性に多い。1年間でキャリア約3万人に1人の割合で発症。
・臨床症状は進行性の両下肢の痙性不全麻痺。下肢のツッパリ感や歩行時の足のもつれ、膀胱直腸障害(排尿障害、頻尿、便秘)。上肢の完全麻痺や嚥下障害を認めることは少ない。
・病勢の進行は、遅い場合から急速に進行する場合など多彩。
・診断は症状と、血液中のHTLV-1抗体陽性かつ脳脊髄液のHTLV-1抗体陽性であれば確定診断。
・ステロイドやIFNαが奏効するが、治療が遅れると有効性が減じる。
・生命予後は悪くないが、日常生活が著しく制約され、難病指定である。
・初期症状は、歩行の違和感、足のしびれ、つっぱり感、転びやすい等。
・多くは進行し、杖歩行、さらには車椅子となる。重症例では下肢の完全麻痺や体幹の筋力低下により寝たきりになる場合もある。
・下半身の触覚や温痛覚の低下、しびれ、疼痛等の感覚障害は約6割に認められ、持続性のしびれや痛みを伴う場合はQOL低下の原因となる。
・自律神経症状は高率にみられ、特に排尿困難、頻尿、便秘等の膀胱直腸障害は病初期より出現することもある。
・進行例では起立性低血圧や下半身の発汗障害、インポテンツがしばしばみられる。
・HAMは早期の診断と治療介入が重要であるため、両下肢の痙性麻痺を呈する患者を診た
ら、HAMを鑑別に挙げる。
・髄液検査では、細胞数増加(単核球優位)を約3~4割に認める。
・髄液のネオプテリンやCXCL10の増加はHAMの脊髄炎症レベルを反映する。
・血液検査では、HTLV-1プロウイルス量がキャリアに比して高値のことが多く、長期予後との相関がある。
・歩行障害の進行速度の中央値は、発症から片手杖歩行まで8年、両手杖歩行まで12.5年、歩行不能まで18年であった一方で、発症後20年以上経過しても杖なしで歩行可能な集団もあり、個人差が大きい。
・ぶどう膜炎は、ベーチェット病や真菌、細菌などで起こるが、HTLV-1感染によって発症するものは、HTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 associated uveitis、以下HU)と呼ぶ。女性に多い。
・発症者の多くは成人で、飛蚊症や霧視、眼の充血、あるいは視力の低下などが急に起こる。ステロイド点眼が奏功。
・ぶどう膜炎には前部ぶどう膜炎(虹彩炎,虹彩毛様体炎)、中間部ぶどう膜炎(硝子体炎)、後部ぶどう膜炎(網膜炎,脈絡膜炎,網脈絡膜炎),汎ぶどう膜炎(眼内組織の全て)の4つの病型に分類される。
・前部ぶどう膜炎が最も多く、次いで、汎ぶどう膜炎>後部ぶどう膜炎>中間部ぶどう膜炎・治療は、前部ぶどう膜炎では主に局所投与(点眼,結膜注射)、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、汎ぶどう膜炎ではステロイド全身投与(内服)。
・視力予後は、網膜が冒される後部ぶどう膜炎と汎ぶどう膜炎が前部ぶどう膜炎よりも不良。
・女性に多く、性差(女性/男性)は105/30(3.5倍)。
・発症年齢は小児から若年成人,高齢者まで広く分布する。
・受診時の主訴は霧視(目のかすみ)(62%)が最多で、次いで飛蚊症(44%)、視力低下(44%)、目の充血(8%)、眼痛(2%)、羞明感(1%)。
・両眼性と片眼性がほぼ同数であることに注意する。
・約30%のHTLV-1ぶどう膜炎患者でぶどう膜炎の再発がみられる。
・白内障(82%)、緑内障(28%)、ドライアイ(涙液層破壊時間が10秒未満)(21%)、黄斑浮腫(5%)、黄斑上膜(4%)などの眼合併症がみられる。
・ブドウ膜炎の経過中に、HAM、ATL、Basedow病、関節リウマチ、間質性肺炎を合併することがある。
・サルコイドーシスはぶどう膜炎の原因疾患の第1位であり、血清アンジオテンシン変換酵素、胸部X線検査などは必ず行う。
・HTLV-1感染は男性から女性に起こりやすく、全キャリアの約20%が性行為感染。
・大多数は母乳を介した母子感染である。
・母子感染ルートの主体は感染したTリンパ球を含む母乳。
・感染率は、完全人工栄養児3.3%、生後3か月(90日)を超えた母乳栄養児では17.7%。
・完全人工栄養児であっても3.3%が母子感染する。これは母乳以外の経胎盤感染や産道感染の存在を示唆する。
・90日未満の母乳栄養では1.9%、凍結母乳栄養では3.1%が母子感染を起こすが、有効性のevidenceは低く、現在は完全人工栄養が推奨される。
・短期母乳栄養を選択しても、ときに授乳が中止できず母乳栄養期間が長期化する可能性がある(児が母乳を望んで泣くし、乳房痛があるためついつい母乳栄養を続けてしまう)。
・経管栄養を必要とする早産低出生体重児では、壊死性腸炎や感染症のリスクを考慮し、成熟した哺乳機能が確立するまで凍結母乳栄養にしたほうがよいかもしれない。
・乳汁栄養法の選択は分娩前に決定しておくことが望ましい。
・母子感染の有無を評価は、3歳以後で抗体検査を行う。陽性である場合にはWB法により確認する。
・小児科医がいない分娩施設から、他施設の小児科医にフォローアップを依頼するため紹介状を送付し、フォローアップが途切れないようにすることが望ましい。
・出生前に産科医と小児科医の円滑な連携を確保することができれば、家族も安心して受診できるかもしれない。
・医療機関のHTLV-1キャリア外来も指定しておくことが望ましい。
・キャリアへの説明の要点:①HTLV-1関連疾患を疑う症状がないか。症状がある場合は専門医への紹介。②HTLV-1感染についての正しい知識。③不安の解消、④生活を変える必要はないことを伝える。⑤HTLV-1関連疾患の検査や定期健診の希望がある場合は、HTLV-1感染症に詳しい医師のいる医療機関や血液内科医への紹介。
・家族の中にHTLV-1キャリアがいる可能性があるが、家族に伝えるべきかどうかは患者本人の判断でよい。
・献血や移植への臓器提供はできない。ただし、家族の中でATLを発症した場合、骨髄移植のドナーにはなれる。

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