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2014年9月30日火曜日

AGAについて

<AGAについて>
☆AGAとは
・Androgenetic Alopecia=Androgen(男性ホルモン)+genetic(遺伝)を背景にした薄毛。
・毛乳頭からの血流を受け、毛母細胞が分裂増殖し角化したものが毛髪となる。1か月に1cm伸びる。
・毛髪サイクルは休止期は3~4ヶ月、成長期は2~6年、退行期は2週間。AGAでは成長期が数ヶ月から1年に短縮される。
・AGAの患者数は全国1260万人。20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代で40%。
cf)EDの患者数は全国1130万人。40代前半で20%、50代で40%、65以上で60%。
☆AGAの原因
・AGAの原因は、男性ホルモン(DHT)の増加、遺伝、血流の悪化。
・DHTは生え際、頭頂部のAGAの原因、血流は頭頂部、前頭部のAGAの主な原因。
・テストステロン(Testosterone, TST)が5α還元酵素により、ジヒドロテストステロン(Dihydrotestosterone, DHT)に代謝されてDHTが毛乳頭の核内のreceptorに結合しDKK-1,PGFβを合成し毛乳頭を障害し発症。
・遺伝は原因遺伝子がX染色体上にあるため母親からの遺伝による影響が強い(母方家系にAGAがいなかったか?)。
☆AGA治療の考え方
・男性ホルモンを抑制:プロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)
・頭皮の血流改善:禁煙、ロゲイン(ミノキシジル)、カロヤン(アロビックス)
・頭皮環境を整える:ケトコナゾールシャンプー
・生活環境の改善、頭皮への栄養:規則正しい生活、毛髪の栄養分である亜鉛、ビタミンB郡、ビタミンC、セレン等の摂取、ヘアパック等のヘアケア
・6ヶ月を目安にして治療効果を判定する。
・5α還元酵素阻害薬は3年での改善(維持を含む)は98%以上の効果。しかし著名な効果は2-6%にとどまるため、ミノキシジルと併用することが重要。
・ガイドラインでは軽症AGAに対しては推奨度C1の育毛剤もしくは5%ミノキシジルand/orフィナステリド。重症AGAに関しては5%ミノキシジルとフィナステリドを1年間投与。1年間の治療後に植毛やかつらの考慮。
・ガイドラインの推奨度Aはプロペシア、ザガーロ、ミノキシジル外用。アデノシン外用はB、ミノキシジルタブレットはD。
・早めに治療しないと毛組織の瘢痕化が生じてからでは遅い。
☆AGA以外の薄毛の原因:
円形脱毛症、ケルスス禿瘡、脂漏性脱毛症、薬剤性脱毛症、妊娠脱毛症
cf)額の生え際、頭頂部以外から脱毛が始まった場合は別の脱毛症の可能性がある
☆5α還元酵素阻害薬
・プロペシア(フィナステリド)はMSD社より2005年から発売。1日1回1錠内服。
・ザガーロ(デュタステリド)はもともとグラクソスミスクライン社(GSK社)から2001年(日本は2009年)に同成分のアボルブが前立腺肥大症治療薬として100カ国以上で販売されており、2015年からAGA治療薬としてザガーロとして承認された。
・5α還元酵素が存在するのは皮膚(毛根、皮脂腺)、肝臓、前立腺。サブタイプが2つあり、皮膚や肝臓では1型が優位、前立腺では2型が優位に存在する。男性ホルモンは精巣で合成されるため、生理学的には5α還元酵素阻害薬による性欲減退はないはず。
・デュタステリドはフィナステリドが作用しない1型5α還元酵素を阻害する上、2型5α還元酵素も約3倍阻害するため、DHTをより強力に抑制する。デュタステリド0.5mgはフィナステリド1mgの1.6倍の発毛効果があり、維持よりも発毛効果が認められる。
・24週間後の毛髪量の増加ではザガーロ0.5mg>ザガーロ0.1mg>プロペシア1mg
 24週間後の毛髪径の増加ではザガーロ0.5mg>ザガーロ0.1mg=プロペシア1mg
・ザガーロ0.1mgより開始し様子を見て0.5mgに増量する。ただしプロペシア1mgからの切り替えはザガーロ0.5mgで良い。
・1年では6割、2年で7割、3年で8割の効果。長期使用によって効果が上がる。
☆5α還元酵素阻害薬の副作用
・プロペシアの副作用は性欲減退(1%、プラセボと有意差なし)、ED(0.7%)、肝障害(食欲不振や全身倦怠感)。
・ザガーロの副作用は性欲減退(4%)、ED(4%)、性欲減少(1%)、肝障害(食欲不振や全身倦怠感)。
☆併用注意
・ザガーロは肝臓でチトクロームP450(CYP3A4)で代謝されるため同じチトクロームP450で代謝されるリトナビルやCa拮抗薬の併用でクリアランスが低下する(つまり血中濃度上昇する)。
☆服用上の注意
・治療開始後2~6週に初期脱毛を生じることがある(休止期の毛髪が脱落し新たな発毛が起こるため)。
・3-6ヶ月でPSAを半減させるため前立腺癌を見落とす可能性があり、5α還元酵素阻害薬投与中は健診時に申告すること。
・処方前にcontrolとしてPSAを測定するとよい。処方中低下したPSAが再上昇または処方中全く低下せず上昇する場合には前立腺癌の除外が必要。
・PSAの低下はプロペシアでは中止すれば2ヶ月で正常化。ザガーロは6ヶ月で正常化するが、1年以上持続することもある。
・プロペシアは献血の際には1ヵ月の休薬が必要。ザガーロは6か月の休薬が必要。
・ザガーロの禁忌はザガーロに対するアレルギーのある患者、妊産婦、小児、重度の肝障害のある患者、安全性の確立されていない20歳未満。
・プロペシアが効かない原因として、毎日きちんと服用できていない、治療開始6か月以内である、AGAの程度が強いなどが考えられる。
・AGAの程度が強い場合はミノキシジル外用の併用の追加や、より強力なザガーロに変更する。
・ザガーロは脱カプセルで経費吸収されるため、女性や小児に触れさせてはいけない。妊婦が触れると経費吸収され胎児の生殖器奇形のリスクがある。しかし精子を介した暴露でもリスクは指摘されてはいるが可能性は低い。しかしリスクはゼロでは無いため12~20週で体内から排泄されるため、子作りをする場合は12~20週前から休薬する。休薬をする間もAGA治療する場合はミノキシジル外用を使う。
☆ロゲイン
・ロゲインはミノキシジルを主成分とする外用薬で、血管拡張作用があり、毛乳頭への血流を改善し、IGF-1やVEGFを産生する。
・プロペシアやザガーロと併用すると効果がある。1%、2%、5%含有のものがあり、副作用の頻度は変わらないので5%が良い。1日2回直接頭皮に塗布する。
・3ヶ月で改善効果があるが、その前に初期脱毛を生じることがあるので6か月は継続する。
・副作用は頭皮のかゆみ、ふけ、発疹、かぶれ、低血圧、性欲減退、手足のむくみなど。
・心血管障害がある場合は担当医と相談をする。アデノシン外用は心血管障害があっても使用できる。
・大正製薬のリアップx5はもともとはロゲインのジェネリックである。アメリカのポラリスリサーチラボラトリーズ社から最高16%のミノキシジルローションが発売されている。
☆ミノキシジルタブレット(自由診療)
・ミノキシジルタブレットはもともとファイザーが高血圧治療薬として開発したが、多毛症が認められたため発毛剤として発売された。外用よりも効果が大きく、1日5mgを分1~2で投与する。3~4ヶ月で改善効果が認められる。保険適応外。
血流改善効果があるため、飲酒後、運動直後、入浴直後の服用は避ける。
・ただし、もともとは降圧薬なので急激な血圧低下や浮腫を生じる可能性がありガイドラインの推奨度はD。
・毛髪の太くするミノキシジル、抜けにくくするのはプロペシアとザガーロ。ミノキシジルは特に前頭部や生え際の発毛に効果がある。
・ミノキシジルの内服と外用の併用も可能である。
・ミノキシジルタブレットの副作用は体毛の増加、吐き気、嘔吐、腹痛、性欲減退、血圧低下、むくみなどが報告されている。副作用のうち多毛が最多でむくみは400例中2例しか報告されていない。
・ミノキシジルタブレットはもともと高血圧治療薬なのでアルコール併用でさらに血圧低下をきたすので注意する。
・ミノキシジルタブレットを水に溶かして頭皮に塗っても効果はなし。
☆アロビックス
・アロビックス(塩化カルプロニウム)はカロヤンが第一三共から1から2%の濃度で発売されているがアロビックスは5%である。ただしガイドラインではC1。1日2~3回頭皮に塗布する。
・副作用は局所発汗、かゆみ、刺激痛、熱感など。
☆用法用量
・プロペシア
1日1回0.2mg、必要に応じて1mgまで増量
効果が確認できるまで6か月の連日投与が必要
献血、妊活は1か月の休薬が必要
・ザガーロ
1日1回0.1mg、必要に応じて0.5mgまで増量
カプセルは噛んだり開けたりせず服用
効果が確認できるまで6か月の連日投与が必要
献血、妊活は半年の休薬が必要
☆禁忌
・プロペシアの禁忌
本剤に過敏症ある場合
妊婦、妊娠の可能性のある女性、授乳中
・ザガーロの禁忌
本剤及び5α還元酵素阻害剤に過敏症がある場合
女性
小児
重度の肝機能異常

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