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2014年9月30日火曜日

AGAについて

<AGAについて>
☆AGAとは
・Androgenetic Alopecia=Androgen(男性ホルモン)+genetic(遺伝)を背景にした薄毛。
・毛乳頭からの血流を受け、毛母細胞が分裂増殖し角化したものが毛髪となる。1か月に1cm伸びる。
・毛髪サイクルは休止期は3~4ヶ月、成長期は2~6年、退行期は2週間。AGAでは成長期が数ヶ月から1年に短縮される。
・AGAの患者数は全国1260万人。20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代で40%。
cf)EDの患者数は全国1130万人。40代前半で20%、50代で40%、65以上で60%。
☆AGAの原因
・AGAの原因は、男性ホルモン(DHT)の増加、遺伝、血流の悪化。
・DHTは生え際、頭頂部のAGAの原因、血流は頭頂部、前頭部のAGAの主な原因。
・テストステロン(Testosterone, TST)が5α還元酵素により、ジヒドロテストステロン(Dihydrotestosterone, DHT)に代謝されてDHTが毛乳頭の核内のreceptorに結合しDKK-1,PGFβを合成し毛乳頭を障害し発症。
・遺伝は原因遺伝子がX染色体上にあるため母親からの遺伝による影響が強い(母方家系にAGAがいなかったか?)。
☆AGA治療の考え方
・男性ホルモンを抑制:プロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)
・頭皮の血流改善:禁煙、ロゲイン(ミノキシジル)、カロヤン(アロビックス)
・頭皮環境を整える:ケトコナゾールシャンプー
・生活環境の改善、頭皮への栄養:規則正しい生活、毛髪の栄養分である亜鉛、ビタミンB郡、ビタミンC、セレン等の摂取、ヘアパック等のヘアケア
・6ヶ月を目安にして治療効果を判定する。
・5α還元酵素阻害薬は3年での改善(維持を含む)は98%以上の効果。しかし著名な効果は2-6%にとどまるため、ミノキシジルと併用することが重要。
・ガイドラインでは軽症AGAに対しては推奨度C1の育毛剤もしくは5%ミノキシジルand/orフィナステリド。重症AGAに関しては5%ミノキシジルとフィナステリドを1年間投与。1年間の治療後に植毛やかつらの考慮。
・ガイドラインの推奨度Aはプロペシア、ザガーロ、ミノキシジル外用。アデノシン外用はB、ミノキシジルタブレットはD。
・早めに治療しないと毛組織の瘢痕化が生じてからでは遅い。
☆AGA以外の薄毛の原因:
円形脱毛症、ケルスス禿瘡、脂漏性脱毛症、薬剤性脱毛症、妊娠脱毛症
cf)額の生え際、頭頂部以外から脱毛が始まった場合は別の脱毛症の可能性がある
☆5α還元酵素阻害薬
・プロペシア(フィナステリド)はMSD社より2005年から発売。1日1回1錠内服。
・ザガーロ(デュタステリド)はもともとグラクソスミスクライン社(GSK社)から2001年(日本は2009年)に同成分のアボルブが前立腺肥大症治療薬として100カ国以上で販売されており、2015年からAGA治療薬としてザガーロとして承認された。
・5α還元酵素が存在するのは皮膚(毛根、皮脂腺)、肝臓、前立腺。サブタイプが2つあり、皮膚や肝臓では1型が優位、前立腺では2型が優位に存在する。男性ホルモンは精巣で合成されるため、生理学的には5α還元酵素阻害薬による性欲減退はないはず。
・デュタステリドはフィナステリドが作用しない1型5α還元酵素を阻害する上、2型5α還元酵素も約3倍阻害するため、DHTをより強力に抑制する。デュタステリド0.5mgはフィナステリド1mgの1.6倍の発毛効果があり、維持よりも発毛効果が認められる。
・24週間後の毛髪量の増加ではザガーロ0.5mg>ザガーロ0.1mg>プロペシア1mg
 24週間後の毛髪径の増加ではザガーロ0.5mg>ザガーロ0.1mg=プロペシア1mg
・ザガーロ0.1mgより開始し様子を見て0.5mgに増量する。ただしプロペシア1mgからの切り替えはザガーロ0.5mgで良い。
・1年では6割、2年で7割、3年で8割の効果。長期使用によって効果が上がる。
☆5α還元酵素阻害薬の副作用
・プロペシアの副作用は性欲減退(1%、プラセボと有意差なし)、ED(0.7%)、肝障害(食欲不振や全身倦怠感)。
・ザガーロの副作用は性欲減退(4%)、ED(4%)、性欲減少(1%)、肝障害(食欲不振や全身倦怠感)。
☆併用注意
・ザガーロは肝臓でチトクロームP450(CYP3A4)で代謝されるため同じチトクロームP450で代謝されるリトナビルやCa拮抗薬の併用でクリアランスが低下する(つまり血中濃度上昇する)。
☆服用上の注意
・治療開始後2~6週に初期脱毛を生じることがある(休止期の毛髪が脱落し新たな発毛が起こるため)。
・3-6ヶ月でPSAを半減させるため前立腺癌を見落とす可能性があり、5α還元酵素阻害薬投与中は健診時に申告すること。
・処方前にcontrolとしてPSAを測定するとよい。処方中低下したPSAが再上昇または処方中全く低下せず上昇する場合には前立腺癌の除外が必要。
・PSAの低下はプロペシアでは中止すれば2ヶ月で正常化。ザガーロは6ヶ月で正常化するが、1年以上持続することもある。
・プロペシアは献血の際には1ヵ月の休薬が必要。ザガーロは6か月の休薬が必要。
・ザガーロの禁忌はザガーロに対するアレルギーのある患者、妊産婦、小児、重度の肝障害のある患者、安全性の確立されていない20歳未満。
・プロペシアが効かない原因として、毎日きちんと服用できていない、治療開始6か月以内である、AGAの程度が強いなどが考えられる。
・AGAの程度が強い場合はミノキシジル外用の併用の追加や、より強力なザガーロに変更する。
・ザガーロは脱カプセルで経費吸収されるため、女性や小児に触れさせてはいけない。妊婦が触れると経費吸収され胎児の生殖器奇形のリスクがある。しかし精子を介した暴露でもリスクは指摘されてはいるが可能性は低い。しかしリスクはゼロでは無いため12~20週で体内から排泄されるため、子作りをする場合は12~20週前から休薬する。休薬をする間もAGA治療する場合はミノキシジル外用を使う。
☆ロゲイン
・ロゲインはミノキシジルを主成分とする外用薬で、血管拡張作用があり、毛乳頭への血流を改善し、IGF-1やVEGFを産生する。
・プロペシアやザガーロと併用すると効果がある。1%、2%、5%含有のものがあり、副作用の頻度は変わらないので5%が良い。1日2回直接頭皮に塗布する。
・3ヶ月で改善効果があるが、その前に初期脱毛を生じることがあるので6か月は継続する。
・副作用は頭皮のかゆみ、ふけ、発疹、かぶれ、低血圧、性欲減退、手足のむくみなど。
・心血管障害がある場合は担当医と相談をする。アデノシン外用は心血管障害があっても使用できる。
・大正製薬のリアップx5はもともとはロゲインのジェネリックである。アメリカのポラリスリサーチラボラトリーズ社から最高16%のミノキシジルローションが発売されている。
☆ミノキシジルタブレット(自由診療)
・ミノキシジルタブレットはもともとファイザーが高血圧治療薬として開発したが、多毛症が認められたため発毛剤として発売された。外用よりも効果が大きく、1日5mgを分1~2で投与する。3~4ヶ月で改善効果が認められる。保険適応外。
血流改善効果があるため、飲酒後、運動直後、入浴直後の服用は避ける。
・ただし、もともとは降圧薬なので急激な血圧低下や浮腫を生じる可能性がありガイドラインの推奨度はD。
・毛髪の太くするミノキシジル、抜けにくくするのはプロペシアとザガーロ。ミノキシジルは特に前頭部や生え際の発毛に効果がある。
・ミノキシジルの内服と外用の併用も可能である。
・ミノキシジルタブレットの副作用は体毛の増加、吐き気、嘔吐、腹痛、性欲減退、血圧低下、むくみなどが報告されている。副作用のうち多毛が最多でむくみは400例中2例しか報告されていない。
・ミノキシジルタブレットはもともと高血圧治療薬なのでアルコール併用でさらに血圧低下をきたすので注意する。
・ミノキシジルタブレットを水に溶かして頭皮に塗っても効果はなし。
☆アロビックス
・アロビックス(塩化カルプロニウム)はカロヤンが第一三共から1から2%の濃度で発売されているがアロビックスは5%である。ただしガイドラインではC1。1日2~3回頭皮に塗布する。
・副作用は局所発汗、かゆみ、刺激痛、熱感など。
☆用法用量
・プロペシア
1日1回0.2mg、必要に応じて1mgまで増量
効果が確認できるまで6か月の連日投与が必要
献血、妊活は1か月の休薬が必要
・ザガーロ
1日1回0.1mg、必要に応じて0.5mgまで増量
カプセルは噛んだり開けたりせず服用
効果が確認できるまで6か月の連日投与が必要
献血、妊活は半年の休薬が必要
☆禁忌
・プロペシアの禁忌
本剤に過敏症ある場合
妊婦、妊娠の可能性のある女性、授乳中
・ザガーロの禁忌
本剤及び5α還元酵素阻害剤に過敏症がある場合
女性
小児
重度の肝機能異常

EDについて

<EDについて>
☆EDとは
・性行為に満足できない状態が3ヶ月以上持続すること。
・患者数は全国1130万人。40代前半で20%、50代で40%、65以上で60%。
cf)AGAの患者数は全国1260万人。20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代で40%。
☆EDの診断
勃起硬度スコア(EHS:Erection Hardness Score)
米国においてEDのセルフチェックのために開発された。簡便かつ信頼性が高い。
グレード0:陰茎は大きくならない。
グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。
グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。
グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。
グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。
硬さの目安として、各グレードでの硬さは以下のように例えられる。
グレード1:こんにゃく
グレード2:みかん
グレード3:グレープフルーツ
グレード4:りんご
グレード0~2の硬度では挿入に不十分なためEDと診断できる。
グレード3~4の場合でも十分な時間硬さを維持できない場合や、体調や精神状態によって硬くならない日がある場合EDの可能性がある。
☆EDの原因
・器質性ED:
①DM,HL,HT→動脈硬化→陰茎海綿体動脈の拡張障害
②アルツハイマー、脳卒中、パーキンソン病、骨盤内手術(TUR-Pt術後では6-68%)による神経障害
③前立腺肥大症、前立腺癌、更年期(LOH症候群、アンドロゲン低下)
・心因性ED:ストレスなどによる現実心因性、トラウマによる深層心因性ED
・薬剤性EDには、抗うつ薬、降圧剤、睡眠剤。例:利尿剤、Ca拮抗薬、βブロッカー(ARBはEDを改善、BPH治療薬のαブロッカーは射精障害を起こすがEDは起こさない)
・リスクファクター:肥満、SAS(夜間の勃起障害→酸素化不良)、運動不足、喫煙、年齢、糖尿病、高血圧、テストステロン低下、慢性腎臓病、鬱、抗鬱薬、薬物、パーキンソン病や脳卒中などの神経疾患
☆ED治療薬
・陰茎海綿体に分布するPDE5を阻害し陰茎海綿体動脈の血管拡張を促す。
・1993年にバイアグラ(シルデナフィル)、2004年にレビトラ(バルデナフィル)、2007年にシアリス(タダラフィル)が承認。
・バイアグラはファイザーより1998年に承認され、日本以外では100mgまで販売されている。日本は50mgまで認められており、通常は50mgを服用する。
・バイアグラ25mgから開始:CYP3A4代謝の薬剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、シメチジン)、抗HIV薬/抗真菌薬、65歳以上、CCr30以下、Child-PughB以上、αブロッカー
・バイアグラ50mgが効かない時はレビトラ20mgやシアリス20mgに切り替えを考える。(ED薬の強さ:レビトラ20mg=バイアグラ100mg=シアリス20mg>レビトラ10mg=バイアグラ50mg=シアリス10mg>レビトラ5mg=バイアグラ25mg=シアリス5mg)。
・勃起の硬さが不足すると感度が増え早漏になるが、レビトラにはバイアグラやシアリスより早漏改善効果がある。ただし早漏治療薬のダポキセチンには及ばない。
・レビトラの通常量は10mgで即効性があり、20mgまで増量でき、バイアグラ同様のED改善効果が期待できる。65歳以上にはレビトラ20mgの適用は無し。
・65歳以上にはレビトラ20mgは処方できないので、進行したEDの65歳以上ではシアリス20mgを使う。
・アドシルカは肺高血圧症の治療薬で40mgを1日1回、ザルティアは前立腺肥大に対する治療薬で用法は5mg1日1回である。成分はシアリスと同じタダラフィルである。
・きちんと前立腺肥大と診断されないと保険診療でザルティアを処方してもらうのは難しい状況である。
・1番新しい薬であるシアリスの通常量は10mgである。副作用が最も少ない。
・DMにより動脈硬化が進行し重度のEDがある場合はシアリス20mgにする。
・シアリスは"妻だけED"などの心因性に効果的である。効果の発現に若干の個人差があることに注意。
・3剤とも心血管イベントの発生率はプラセボと優位差なし。降圧薬との併用もOK。
☆ED治療薬の持続時間
・効果発現までの時間はバイアグラが30分~1時間、レビトラが10分~30分、シアリスが1~2時間。
・効果持続時間はバイアグラが3~6時間、レビトラが5~8時間、シアリスが30~36時間。
・食事やアルコールの影響はバイアグラやレビトラが受けるのに対し、シアリスはほとんど受けないとされている。
・シアリスは1時間後に効き始め、3時間後がピーク、30~36時間続くため、金曜の夜に内服しておけば日曜まで続くためウィークエンドピルと言われている。
☆副作用
①重篤なもの:
1)NAION(non-arteric anterior ischemic optic neuropathy):突然の無痛性の視野欠損。50歳以上で2-10/10万人に生じる。
2)突発性難聴
3)前立腺癌術後のPSA再発
4)メラノーマ(紫外線と同じハザード比で交絡因子の可能性)
5)持続性勃起症:服用後4時間以上続くなら泌尿器科受診が必要である。
②軽微なもの:
・顔のほてり、目の充血、頭痛、鼻づまり、青視症(視野が青色に見える)→全て自然軽快する。シアリスは副作用が少ない。
・顔のほてり、目の充血は効果発現のサイン、薬効が切れる頃に鼻づまりや目の奥の痛み、光過敏、青視症が認められるがすぐに改善する。
・その他、血流増加による蠕動運動上昇で胃部不快感(GERD)、下痢を認めることがある。結膜炎、腰痛などもあり。
・シアリスのみ背部痛(5%)を認めることがある(シアリスは骨格筋に分布するPDE11も阻害するため)。
☆禁忌、併用禁忌
・併用禁忌:硝酸薬(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド)、クラスIIIの抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール)、肺高血圧薬(リオシグアト)との併用は禁忌。
cf)ニプラジロール点眼液、ハイパジールコーワ点眼液にニプラジロールが含まれており、添付文書上はバイアグラと併用禁忌ではないが併用禁忌としているクリニックもある。
cf)メニエールにて処方されるイソバイドはイソソルビドだが、硝酸イソソルビドとは違うのでED薬は使用可能。
・禁忌:PDE5阻害薬そのものにアレルギーがある人、肝障害、心血管障害があり性行為そのものが禁止されている人、90/50mmHg以下の低血圧や170mmHg以上のコントロールされていない高血圧症、網膜色素変性症(糖尿病性網膜症には慎重投与)
・バイアグラやシアリスにはないレビトラの禁忌:先天性QT延長症候群、クラス1Aの抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド)、抗HIV薬、ケトコナゾールやイトラコナゾール、透析中。
☆服用上の注意
・性行為の1時間前に服用する。
・ED薬を飲んだだけでは勃起しない。ED薬服用後に性的興奮が加わる必要がある。
・アルコールはリラックス効果があるが、過度に飲酒すると神経伝達が悪くなるためほどほどにする。
・性欲には影響しない(催淫作用はない)。
・ED薬は5~6回使わないと効果にムラがあり、また食事の影響受けるので食事のタイミングを掴むためにも5~6回試す必要がある。
・必ず空腹時に服用すること、食後に服用するときは2~3時間あけて、また油ものは避けるようにする。
・食事をする場合は食前1時間前に内服して吸収をさせてからにしておく。
・ED薬の効果が効かないのはアルコールの飲み過ぎや食後の服用が最も多い原因。
・シアリスは食事の影響は受けにくいが800kcal以上の脂っこい食事では効果が減弱する。
・ED薬は直射日光にあてさえしなければ製造から3年間は保存可能。
・持病で服用中ならお薬手帳で禁忌薬がないか必ず確認する。
☆用法用量
血流改善効果があるため、飲酒後、運動直後、入浴直後の服用は避ける。
・バイアグラ
1日1回25-50mgを性交の1時間前に服用(投与間隔は24時間)
65歳以上、肝障害、重度の腎障害(CCr<30ml/min)では25mgから開始
・レビトラ
1日1回10mgを性交の1時間前に服用、効果ないときは20mgに増量(投与間隔は24時間)
65歳以上、中等度肝障害では5mgから開始し、上限は10mg
腎障害、HDの場合は禁忌
・シアリス
1日1回10mgを性交の1時間前に服用、効果ないときは20mgに増量(投与間隔は24時間)
軽度又は中等度肝障害では上限10mg
中等度の腎障害では5mgから開始し上限10mg(投与間隔は48時間)
重度の腎障害では5mgが上限(投与間隔は48時間)
HDの場合は禁忌
☆禁忌
・バイアグラの禁忌
本剤に過敏症の既往
硝酸剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド)投与中
心血管障害により性行為が不適当
重度の肝機能障害(肝硬変)
低血圧(90/50mmHg以下)又は無治療の高血圧(安静時収縮期170mmHg以上または安静時拡張期血圧100mmHg以上)
脳梗塞、脳出血、心筋梗塞の既往が6ヶ月以内
網膜色素変性症(DM網膜症がある場合も禁忌→DM患者はDR(-)を必ず記載する)
アミオダロン投与中
可溶性グアニル酸シクラーゼ(リオシグアト)投与中
・レビトラの禁忌
バイアグラの禁忌に以下を追加
先天性QT延長症候群、クラス1A抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド)、クラス3抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール)
血液透析患者、腎障害(DM患者はDKD(-)を必ず記載する)
不安定狭心症
CYP3A4を阻害する薬剤(リトナビル、インジナビル、アタザナビル、サキナビルメシル、ホスアンプレナビル、ロピナビル・リトナビル、オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル、ダルナビル、テラプレビル、外用剤以外のケトコナゾール、イトラコナゾール、コビシスタット)
抗HIV薬
・シアリスの禁忌
バイアグラの禁忌とほぼ同じ(心筋梗塞の既往が6ヶ月→3ヶ月以内に変更あり)
血液透析

2014年9月29日月曜日

ダイエット薬について

☆ダイエット薬について
サノレックス(マジンドール)
・食欲中枢の抑制、消化管吸収抑制作用、代謝亢進作用
・10kgの体重減少効果、75%で効果
・昼食30分前に1日1錠0.5mgから開始(不眠になるため夜の内服はしない)
・2週間で効果がなければ0-1-0→0-2-0→1-2-0の順に増量
・覚醒効果、依存性があるため原則1日3錠28日分までの処方。3ヵ月投薬した後、3ヵ月休薬(休薬中はスーグラ、ゼニカルに変更)
・副作用は口渇感、便秘、悪心・嘔吐、睡眠障害、胃部不快感
・便秘にはグルコマンナンを併用(空腹感の解消でダイエットにつながる)
・禁忌:サノレックスに過敏症のある人、緑内障、重度の心不全、重度の膵疾患、重度の肝疾患、重度の腎疾患、重度の高血圧、脳血管障害、不安や抑うつや興奮状態、統合失調症、薬物やアルコールの乱用歴、MAO阻害薬の2週間以内の使用歴、妊婦、小児
ゼニカル(オルリファスト、オルリスタット)
・脂肪分解に必要なリパーゼを抑制し、摂取した30%の脂肪分を分解せずそのまま体外へ排出させる
・FDA(アメリカ食品医薬局)が認可している肥満薬
・7kgの体重減少効果
・サノレックスとの併用も可能
・1日3回食前、もしくは食事と一緒に服用
・脂溶性ビタミンの吸収も抑制→長期服用をする場合はマルチビタミン等の摂取を行うこと
・禁忌:胆嚢障害、慢性消化不良がある人
・副作用は便中に脂質が増え脂肪便、軟便~下痢(ほぼ必発)
スーグラ、ルセフィ
・3kgの体重減少効果
・1日1回朝食後または朝食前(最大100mgまで)に内服
・副作用は脱水症、尿路感染
・併用禁忌:インスリン、SU剤
・激しい運動、アルコール摂取で低血糖おこすことあり
・ルセフィの場合は1日1回2.5mgを朝食前または朝食後に内服(5mg1日1回まで増量可)
グルコマンナン
・水溶性食物繊維
・食物繊維で便通がよくなるのでサノレックスによる便秘防止に併用する
・1日2回。1錠を食前30~45分に240ml以上の水で内服する
・禁忌:腸閉塞の既往のある人

2014年9月28日日曜日

HTLV-1について

☆HTLV-1について
・スクリーニングは妊娠初期から中期にかけて行う。スクリーニング検査が陰性なら非感染者となる。
・スクリーニング検査が陽性ならウェスタンブロット法(WB法)を行う。
・WB法が陽性ならキャリアとなる。WB法で判定保留の場合はPCR法を行う。
・スクリーニングで陽性になるのは0.3%、WB法で陽性になるのは51.6%、判定保留は11.7%。
・HTLV-1はRNAウィルスである。
・主な感染経路は母子感染(8割)と性行為感染(2割)。感染力が弱いためこれら以外で感染することはない(子供同士の接触や温泉、散髪、唾液などでは感染しない)。
・3か月以上の母乳栄養では18%に母子感染を起こすが、完全人工栄養でも約3%が母子感染を起こす。
・日本では100万人以上のキャリアがおり、西日本に多い。
・ATL、HAM、ブドウ膜炎を起こす。生涯発生率はATLが5%、HAMが0.3%。
・ATLの発症年齢の中央値は67歳。やや男性に多い。キャリアの生涯発症率は男性に多い。40年以上の持続感染によって起こるため、母子感染でのキャリアで発症する。
・臨床病型は、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に分類される。急性型では末梢血にflower cellと呼ばれる核に切れ込みのある異常リンパ球が出現する。
・臨床症状は、1週間以上の高熱、強い倦怠感、リンパ節腫脹、赤く盛り上がった皮疹、高カルシウム血症に伴う意識障害、肝腫大、脾腫大、種々の日和見感染。
・HTLV-1抗体検査が陽性で、かつサザンブロット法によって血液、皮膚病変、リンパ節病変のHTLV-1感染細胞がモノクロナールに増殖していれば確定診断となる。
・ATLは白血病の中でも予後は著しく不良。
・急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の生存期間中央値はそれぞれ6か月,10か月,24か月,5年以上。4年全生存率はそれぞれ11%,16%,36%,52%。
・ATLへの進展危険因子:男性、ウイルス量、年齢、家族歴、他の疾患治療中のHTLV-1陽性判明
・ATL急性型、リンパ腫型の予後予測因子:Ann Arbor stage,Per-formance Status(PS),年齢,血清Alb値,soluble interleukin-2 receptor(sIL-2R)
・ATLの予後不良因子:PS、好中球減少、血清LDH値、節外病変数、全病変数、化学療法の有無
・ATLの腫瘍性の維持に重要なHTLV-1 bZIP因子(HBZ)を標的とするワクチン療法はHAMやATLの発症予防や病勢制御にも有効な可能性がある。
・くすぶり型や予後不良因子のない慢性型では急性転化するまで経過観察。
・リンパ腫型、急性型、予後不良因子のある慢性型は化学療法、同種造血幹細胞移植、サルベージ療法、分子標的治療。
・抗CCR4抗体(ポテリジオ)は再発、再燃例に対する単剤投与による全有効率50%,生存中央期間13.7か月。
・インターフェロンαと核酸系逆転写酵素阻害薬(nucleoside reverse transcriptase inhibitor:NRTI)のzidovudine(AZT)の併用療法が化学療法よりも有効(5年全生存率46%vs20%)
・HAMは0~50歳代の発症(平均40歳)が多い。女性に多い。1年間でキャリア約3万人に1人の割合で発症。
・臨床症状は進行性の両下肢の痙性不全麻痺。下肢のツッパリ感や歩行時の足のもつれ、膀胱直腸障害(排尿障害、頻尿、便秘)。上肢の完全麻痺や嚥下障害を認めることは少ない。
・病勢の進行は、遅い場合から急速に進行する場合など多彩。
・診断は症状と、血液中のHTLV-1抗体陽性かつ脳脊髄液のHTLV-1抗体陽性であれば確定診断。
・ステロイドやIFNαが奏効するが、治療が遅れると有効性が減じる。
・生命予後は悪くないが、日常生活が著しく制約され、難病指定である。
・初期症状は、歩行の違和感、足のしびれ、つっぱり感、転びやすい等。
・多くは進行し、杖歩行、さらには車椅子となる。重症例では下肢の完全麻痺や体幹の筋力低下により寝たきりになる場合もある。
・下半身の触覚や温痛覚の低下、しびれ、疼痛等の感覚障害は約6割に認められ、持続性のしびれや痛みを伴う場合はQOL低下の原因となる。
・自律神経症状は高率にみられ、特に排尿困難、頻尿、便秘等の膀胱直腸障害は病初期より出現することもある。
・進行例では起立性低血圧や下半身の発汗障害、インポテンツがしばしばみられる。
・HAMは早期の診断と治療介入が重要であるため、両下肢の痙性麻痺を呈する患者を診た
ら、HAMを鑑別に挙げる。
・髄液検査では、細胞数増加(単核球優位)を約3~4割に認める。
・髄液のネオプテリンやCXCL10の増加はHAMの脊髄炎症レベルを反映する。
・血液検査では、HTLV-1プロウイルス量がキャリアに比して高値のことが多く、長期予後との相関がある。
・歩行障害の進行速度の中央値は、発症から片手杖歩行まで8年、両手杖歩行まで12.5年、歩行不能まで18年であった一方で、発症後20年以上経過しても杖なしで歩行可能な集団もあり、個人差が大きい。
・ぶどう膜炎は、ベーチェット病や真菌、細菌などで起こるが、HTLV-1感染によって発症するものは、HTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 associated uveitis、以下HU)と呼ぶ。女性に多い。
・発症者の多くは成人で、飛蚊症や霧視、眼の充血、あるいは視力の低下などが急に起こる。ステロイド点眼が奏功。
・ぶどう膜炎には前部ぶどう膜炎(虹彩炎,虹彩毛様体炎)、中間部ぶどう膜炎(硝子体炎)、後部ぶどう膜炎(網膜炎,脈絡膜炎,網脈絡膜炎),汎ぶどう膜炎(眼内組織の全て)の4つの病型に分類される。
・前部ぶどう膜炎が最も多く、次いで、汎ぶどう膜炎>後部ぶどう膜炎>中間部ぶどう膜炎・治療は、前部ぶどう膜炎では主に局所投与(点眼,結膜注射)、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、汎ぶどう膜炎ではステロイド全身投与(内服)。
・視力予後は、網膜が冒される後部ぶどう膜炎と汎ぶどう膜炎が前部ぶどう膜炎よりも不良。
・女性に多く、性差(女性/男性)は105/30(3.5倍)。
・発症年齢は小児から若年成人,高齢者まで広く分布する。
・受診時の主訴は霧視(目のかすみ)(62%)が最多で、次いで飛蚊症(44%)、視力低下(44%)、目の充血(8%)、眼痛(2%)、羞明感(1%)。
・両眼性と片眼性がほぼ同数であることに注意する。
・約30%のHTLV-1ぶどう膜炎患者でぶどう膜炎の再発がみられる。
・白内障(82%)、緑内障(28%)、ドライアイ(涙液層破壊時間が10秒未満)(21%)、黄斑浮腫(5%)、黄斑上膜(4%)などの眼合併症がみられる。
・ブドウ膜炎の経過中に、HAM、ATL、Basedow病、関節リウマチ、間質性肺炎を合併することがある。
・サルコイドーシスはぶどう膜炎の原因疾患の第1位であり、血清アンジオテンシン変換酵素、胸部X線検査などは必ず行う。
・HTLV-1感染は男性から女性に起こりやすく、全キャリアの約20%が性行為感染。
・大多数は母乳を介した母子感染である。
・母子感染ルートの主体は感染したTリンパ球を含む母乳。
・感染率は、完全人工栄養児3.3%、生後3か月(90日)を超えた母乳栄養児では17.7%。
・完全人工栄養児であっても3.3%が母子感染する。これは母乳以外の経胎盤感染や産道感染の存在を示唆する。
・90日未満の母乳栄養では1.9%、凍結母乳栄養では3.1%が母子感染を起こすが、有効性のevidenceは低く、現在は完全人工栄養が推奨される。
・短期母乳栄養を選択しても、ときに授乳が中止できず母乳栄養期間が長期化する可能性がある(児が母乳を望んで泣くし、乳房痛があるためついつい母乳栄養を続けてしまう)。
・経管栄養を必要とする早産低出生体重児では、壊死性腸炎や感染症のリスクを考慮し、成熟した哺乳機能が確立するまで凍結母乳栄養にしたほうがよいかもしれない。
・乳汁栄養法の選択は分娩前に決定しておくことが望ましい。
・母子感染の有無を評価は、3歳以後で抗体検査を行う。陽性である場合にはWB法により確認する。
・小児科医がいない分娩施設から、他施設の小児科医にフォローアップを依頼するため紹介状を送付し、フォローアップが途切れないようにすることが望ましい。
・出生前に産科医と小児科医の円滑な連携を確保することができれば、家族も安心して受診できるかもしれない。
・医療機関のHTLV-1キャリア外来も指定しておくことが望ましい。
・キャリアへの説明の要点:①HTLV-1関連疾患を疑う症状がないか。症状がある場合は専門医への紹介。②HTLV-1感染についての正しい知識。③不安の解消、④生活を変える必要はないことを伝える。⑤HTLV-1関連疾患の検査や定期健診の希望がある場合は、HTLV-1感染症に詳しい医師のいる医療機関や血液内科医への紹介。
・家族の中にHTLV-1キャリアがいる可能性があるが、家族に伝えるべきかどうかは患者本人の判断でよい。
・献血や移植への臓器提供はできない。ただし、家族の中でATLを発症した場合、骨髄移植のドナーにはなれる。

2014年9月27日土曜日

半減期と投与間隔

☆半減期と投与間隔
・投与間隔=半減期であれば5回目の投与で定常状態(吸収量=排出量)となる。
・投与間隔<半減期であれば5回目の投与でより高い濃度で定常状態となる。
・投与間隔>半減期であれば半減期の4倍以内であれば時間はかかるが定常状態となる。
・薬効、副作用が消失するのは投与中止後半減期の5倍経た時。
・ボルタレンの半減期は1.6時間なので投与間隔が1.6×4=6.4hr以内だと血中濃度が上がっていずれ定常状態になるので1日3回投与(8hr間隔)までの投与とする。
・薬剤投与量が代謝酵素の働きを超えた場合は体内消失時間は半減期×5を超える。投与量を倍にすれば血中濃度は倍になるはずだが、それ以上になった場合は投与量が酵素による代謝量を超えていることを示す。
・ザガーロの半減期は2hr。1日1回投与し半年後の定常状態における半減期は約1か月なので投与中止後に薬効、副作用が消失するのは約5か月後。

2014年9月26日金曜日

健診でγGTPのみ上昇している場合

☆健診でγGTPのみ上昇している場合
・腎、膵、肝、脾に分布している。
・飲酒、胆石、アルコール、サプリ、ランニングなどでも上昇する。
・1ヶ月断酒して再検する。
・AST,ALT,γGTP,ALP,HBs抗原,HCV抗体,ANA(AIH),AMA(PBC),腹部エコーして脂肪肝や肝SOLがないか精査する。異常なければ年2回フォローする。
・軽度肝機能異常はウルソ200mg3錠分3で改善することがある。
・胆汁うっ滞でγ-GTP、ALP、LAPが上昇するがγ-GTPはそれ以外でも上昇する。
・γ-GTPのみ上昇し、ALP,LAPが正常なら飲酒、抗痙攣薬、非アルコール性脂肪肝である。
・γ-GTPはアルコール摂取に敏感に反応して上昇、禁酒後2週間で半分以下になる。

CVポートで点滴漏れが生じたとき

☆CVポートで点滴漏れが生じたとき
・穿刺間違い(針がポートに刺さっておらず皮下注になっていた、cut down法で造設されており皮下深くにポート本体がある場合は穿刺間違いを起こしやすい)→皮下注であれば滴下不良あるはず、試験的に生食をivしてもスムーズにはいかないはず、CXRでわかるはず
・ポート自体の破損→滴下不良はないかも、生食ivもスムーズ、ポート本体の損傷はCXRやCTでは分からない(ポート本体からカテーテルが外れている場合や、カテーテルがピンチオフしている場合はCXRでもわかる、ヨード造影剤でも圧をかけないと漏れが確認できない場合もあるが10mlより小さいシリンジで強く注入すると本体とカテーテルが外れる場合があるので注意)
・ポート破損の徴候として注入時のポートの閉塞、疼痛、注入中の滴下不良、点滴漏れ、腫脹がある。
・すぐ抜去できない場合は、ポート破損を疑えばヘパリンロックし末梢点滴に変更しておく。

潜在性甲状腺機能低下症

☆潜在性甲状腺機能低下症
・顕性甲状腺機能低下症は血清TSH10μU/mL以上、血清FT4が基準値以下。
・潜在性甲状腺機能低下症は血清TSH正常値以上、血清FT4が基準値以内。TSHが10μU/mLを超えるならチラージン補充を行う。
・挙児希望ならTSHが2.5μU/mLを超えるならチラージン補充を行う。
・顕性、TSHが10以上の潜在性ではチラージン補充を行う。
・抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体を測定してまず慢性甲状腺炎の有無を確認する。
cf)チラージンSの増量の方法
・1日1回朝の内服が基本
・12.5-25μgから開始し、2-4週間毎に12.5-25μgずつ増量する
・原発性甲状腺機能低下症では、維持量をTSHが1-2μU/mLになるように1.5-2.5μg/kg/day(50-200μg/day)(中枢性甲状腺機能低下症では血中FT4,FT3を指標にする)

生食ロックとヘパリンロック

☆生食ロックとヘパリンロック
・カテーテル閉鎖はカテーテルへの血液の逆流が原因。
・逆流防止効果は生食でもヘパリン生食でも変わりがない。
・ヘパリンはカテーテル上のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の増殖の原因になる。
・CVラインにコアグラが付着すると感染源になるためCVラインではヘパリンロックがいいとされてきたが、感染率でも生食ロックと有意差がなかった。
・末梢ラインでもCVラインでも生食ロックでよい。
・CVポートの生食ロックの方法:全て清潔手袋装着の後、Jループタイプの短く固いルート(長いルートは動きで逆流することあり)にシュアプラグを接続し生食を10ml以上のシリンジでゆっくりと注入し、シリンジで陽圧をかけながらシリンジを引き抜く(感染防止の観点からなるべく三方活栓は使わない)。その後、ルートを清潔ガーゼでくるんでおく。

尿量減少時の対応

☆尿量減少時の対応
・溢水であればラシックス投与、脱水であれば点滴だが、判断しかねる場合も多い。脱水の方がより怖い(脱水⇒臓器還流低下⇒多臓器不全)。迷ったら、まずは点滴をしてみる。
・溢水か脱水かの判断材料は、
 ①in/outバランスを見る。食事量が減っていないか、点滴量が過剰でないか。
 ②浮腫があるのか、turgorの低下があるのかを見る。
 ③溢水であれば血圧上昇、脱水であれば血圧低下であることが多い。
 ④溢水であれば希釈尿、脱水であれば濃尿であることが多い。
一番正確なのは腹部エコーでIVCを見ること。心臓から2cmのところで測定し、プローブを縦にして吸気時/呼気時ともに1桁mmなら脱水、ともに2桁なら多め、20mm超えてれば溢水。
感染、術後、重症膵炎などでで炎症反応(SIRS)により血管内皮が障害され、サードスペースに浸出し血管内脱水が生じ尿量減少と浮腫や胸水が生じる。血管内脱水で血圧低下となる場合も、血管攣縮やRAA系亢進で血圧上昇となる場合がある。この場合は利尿剤の投与は禁忌に近い。むしろ点滴を増量し腎血流を保たなければならない(胸水貯留に対し胸腔ドレーンを入れてでも)。
・浮腫があるのに濃尿である場合、終末期や肝硬変など低Albでの漏出性の血管内脱水である。酸素化が不良であれば胸水貯留があるので、血管内脱水でもラシックス投与が必要になってくる。要するに、同じ血管内脱水でも回復可能な一時的なものなのか、終末期で回復不可能なのかによって対応が変わってくる(前者なら胸水貯留による酸素化不良があれば胸腔ドレーンを入れてでも点滴を増量する、後者なら酸素化不良あれば利尿剤で水を引く)。

抗生剤のMICについて

☆抗生剤のMICについて
 MICとは最小発育阻止濃度。例えば、http://www.antibiotic-books.jp/drugsによると、緑膿菌のMIC80(80%の菌が死滅するMIC)に関して、MEPMは6.25μg/ml、PIPCは16μg/mlとなっている。
 ここで例えば、ある検体から培養された緑膿菌株に対し、PIPCのMICが32μg/mlの場合、添付文書に載っている処方量ではMIC32μg/mlに相当する血中濃度が保てないということ=効果がない、Rと判定される。
 培養感受性試験の結果、MEPM、PIPCがともにS(感受性あり)でも、MEPMのMICが6μg/ml、PIPCのMICが6μg/mlなら、この緑膿菌はPIPCの方が効きやすいということになる(本来のPIPCのMICは16μg/mlであるため)。 つまり、ともに感受性があり、かつ標準MICと比較しMICが低い抗菌薬がより効果があるということになる。

高齢者の強い皮膚掻痒感/かゆみ

<高齢者の強い皮膚掻痒感/かゆみ>
・肝機能、腎機能のチェック。
・疥癬を除外する(メスの刃を立ててかさぶたのところを数回こすって、スピッツにメスごと入れて提出する)
・疥癬ならストロメクトール3mg錠を体重に合わせて1回のみ内服する(15-24kgは1錠、25-35kgは2錠、36-50kgは3錠、51-65kgは4錠、66-79kgは4錠、66-79kgは5錠、80kg以上は200μg/kg)。
・皮脂欠乏性皮膚炎による掻痒感にはオイラックスクリームが有効。
・尿素系は保湿効果はあるが、尿素その物が刺激するのでヘパリン類似物質(ヒルドイド)ローションorクリームやオイラックスクリームを使う。
・オイラックスクリームが効かない時はヒスタブロック(セレスタミン)1回1-2錠を1日1-4回投与する(1錠にPSL2.5mgが含まれることに注意、長期使用ならH2ブロッカーを併用する)。
・夜間の掻痒感が強い場合はセロトニン過剰が原因のことがあり、ニューレプチルとして2-3mg(ニューレプチル細粒0.002-0.003g)を1日1-2回投与も有効らしい。
・少量の抗欝剤(トフラニール10mgなど)や神経因性疼痛用薬剤も有効。
・DMはむしろコントロールされている時あたりから出る印象がある。
・類天疱瘡も初期は掻痒感が強い。類天疱瘡ではBP180抗体が増加する。結節性類天疱瘡はBP180抗体が低下する。

人工呼吸器アラーム対応

☆人工呼吸器アラーム対応
注意)気切造設後すぐのカニューレ交換で気管の前に入ってしまうことがある(指で確認して潰れた気管を広げること)
・無呼吸アラーム
設定:15-20秒に設定
原因と対策:
①自発呼吸の低下→PS,CPAPではなくA/C,SIMV,SIMV+PSに変更
②呼吸回路のリーク、外れ→リーク(カフ漏れに注意)、回路の確認
③自発呼吸のトリガー不良→トリガー感度を上げる

・気道内圧上限アラーム
設定:40cmH2O程度
原因と対策:
①設定1回換気量が高すぎる→適切に設定
②痰、凝血塊による閉塞→吸引
③回路の閉塞、片肺換気→挿管チューブを浅くする、チューブを噛んでいないか
④巨大無気肺、緊張性気胸→無気肺の治療、脱気
⑤気管支狭窄、気管支痙攣など→気管支拡張薬
⑥肺炎、肺水腫、ARDSなど肺胞レベルの問題→肺保護換気のため1回換気量を下げる
⑦autoPEEPの存在→換気回数減少、吸気時間短縮、呼吸時間延長
⑧バッキング(咳)、ファイティング(呼吸器と患者の呼吸が合わずにぶつかる)→鎮静剤の増量、同調性のよいPCV,PSVへ変更

・気道内圧下限アラーム
設定:ピーク圧-10cmH2O,ピーク圧の70-80%
原因と対策:
①回路接続部のゆるみ、はずれ、回路破損→接続確認
②カフ周囲からのリーク:気切チューブの入れ替え
③胸腔ドレーンからの大量リーク→呼吸器外科へコンサルト
④トリガー感度が鈍く自発呼吸により陰圧形成→トリガー感度を上げる
⑤強い自発呼吸→鎮静剤の増量、同調性のよいPCV,PSVへ変更

・分時換気量下限アラーム
設定:分時換気量の50%程度、PCVでは70-80%
原因と対策:
①気道内圧下限アラームと同じ原因
②不適切な換気モード→自発呼吸を前提としてPSVでは自発呼吸数が減少すると容易に低換気になる、SIMV(+PS)の設定換気回数が少ない場合は増やす
③自発呼吸のトリガー不良→トリガー感度を上げる

・分時換気量上限アラーム
設定:10-20L/分
原因と対策:
①1回換気量や換気回数が多すぎる→適切に設定
②患者の頻呼吸→鎮静剤の増量
③A/C設定→A/Cはすべての呼吸をフルサポートするため過換気になるリスクがある

・分時呼吸回数アラーム
設定:30-40回/分
原因と対策:
①患者の頻呼吸→鎮静剤増量
②ミストリガー→回路内貯留水が揺れてもミストリガーになれうことがあるので貯留水を除去する、トリガー感度を下げる

繰り返す水疱

☆繰り返す水疱
・鑑別として蚤や亜鉛欠乏、褥瘡(機械的刺激)によるものがある。
・血清亜鉛値を測定し、亜鉛欠乏ならプロマックD錠の内服を行う。
・水疱が緊満性で皮疹もなければ類天疱瘡の可能性あり。抗BP180抗体の測定をしてみる(抗BP180抗体陰性なら抗BP230抗体も測定してみる)。
・局所性なら水疱は潰して皮はとらずに、洗浄しワセリンガーゼで対処。
・痒みが強い時は短期的にステロイド外用を行う。
・全身に多発している時はPSL20-30mgを2週間投与し、改善あれば漸減もしくは中止でよい。再発するようならPSL5-10mgで継続する。
・治療に応じて抗BP180抗体は低下していく(病勢を反映する)。

終末期で痰詰まりによる死亡の場合の死亡診断書やICについて

☆終末期で痰詰まりによる死亡の場合の死亡診断書やICについて
・重症の原疾患(老衰、蘇生後低酸素脳症、慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害後遺症など)のために日常的に痰が多い状態で、呼吸筋疲労や嚥下反射の低下のため自己喀出がうまくできず痰が詰まったということをICする。
・突然の呼吸停止の原因が喀痰による閉塞とは限らない。脳機能の廃絶としての呼吸停止もある。
・直接の死因としては、肺炎もしくは呼吸不全(約1日)、慢性気管支炎(吸痰回数が1日8回以上になっていた期間)、その原因に原疾患(老衰、低酸素脳症、慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害後遺症など)を記載する。罹病期間は同疾患の診断時、老衰であれば廃用(食事が取れなくなった時期)となった時期からの期間を記載する。
注1)窒息という表現は外因死に対して使われる。
注2)厳密には急性気道閉塞(その原因は喉頭嚥下機能低下、その原因は脳血管障害後遺症など)となる。
注3)厳密には鑑別疾患に肺塞栓症、心筋梗塞、致死性不整脈が考えられる。
注4)WHOは疾患の終末像として心不全や呼吸不全を死因と記載するのは死因統計が不正確になるため書かないよう推奨しているが、明らかな病態としての心不全、呼吸不全を記入することは問題ない。

終末期で高Na血症なのに浮腫や胸水が生じる理由

☆終末期で高Na血症なのに浮腫や胸水が生じる理由
・経鼻栄養、胃ろう栄養では2年弱、高カロリー点滴は8ヶ月の生命予後。
・長期間の高カロリー点滴の結果、心不全になっていく。
・低栄養による低Alb状態が進行し膠質浸透圧を維持できずに漏出性胸水や肺水腫、浮腫を生じ、血管内は脱水となる(∴高Na血症=脱水-"血管内脱水"-なのに浮腫や胸水が生じる)。従って、胸水貯留を認めたら点滴量を絞っていく。血管内脱水では通常の脱水と同様に尿は少なく濃くなってくる。
・尿量を維持(臓器還流を維持)する目的で点滴量を増加させていけば胸水貯留が増悪し酸素化が不良になってくる。
・終末期の心不全と肺炎は効率に合併し、どちらも致命的なので明瞭に区別するのは難しい。
・肺水腫がある間は肺炎も完治するのが困難になる。
・したがって、やや脱水にしてでも補液調整していくのがよい。

療養病院でのIVH管理まとめ

☆療養病院でのIVH管理まとめ
注意)異常があるからといって、すぐに抗生剤を開始したり、利尿剤を開始したりしないこと。
①アミノトリパ1号850ml+ビタジェクト1A+ソルデム3A200mlから開始(もしくはネルネオパNF1号1000ml)⇒安定していればフルカリック2号1000ml+メドレニック1Aに変更
cf)基本は1000mlだが、男性や大柄女性にはソルデム3A200mlや500mlを追加し1200-1500mlにしておく。
cf)ターミナルでない場合は最低1000mlは入れておくこと。ターミナルとは低栄養が進行し浮腫と尿量減少(濃尿)が来た状態を指す。
cf)TPN開始後、3日間は1日1回のBS測定を行うこと。知らずに高血糖から脱水になっている場合あり。
cf)利尿剤の内服を中止した場合は点滴量を減らすこと。
②熱があるならスルペラゾン(SBT/CPZ、後発:セフロニック、セフォン、ワイスタール全て同じ)1g+N/S100ml1日2回を5日間投与。改善あればさらに5日間追加し中止。改善なければMEPM0.5g+N/S100mlに変更し5日間投与する。それでも改善なければカテ抜去する。
cf)フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
cf)終末期では肺炎と心不全は高率に合併し線引きが難しい。
③頻脈が続くならワソラン1A+N/S100ml投与。改善なければジゴシン0.5A+N/S100ml連日投与から開始。
cf)経管栄養時の頻脈発作の場合、ハーフジゴキシン1T(0.125mg)+プラビックス(クロピドグレル)75mg内服で改善することがある。
④浮腫、SpO2低下、レントゲンでのうっ血像(butterfly shadowもしくは両側上肺野のうっ血像もしくは片側/両側胸水)の3つが全て揃えば(どれかだけではダメ)バルーン留置しラシックス1A+N/S100ml開始。改善あればラシックス中止(脱水になってしまうので漫然と継続しないこと)。
cf)浮腫のみで利尿剤は開始しないこと。浮腫+SpO2低下であれば利尿剤を開始してもよい。
cf)心不全による頻脈では利尿剤ではなく、ワソランやジゴシンを投与すること。
cf)③、④の両方が認められるならラシックス1A+ジゴシン0.5A+N/S100mlから開始する。
cf)メインを減らす場合はアミノトリパ1号をビーフリード500mlに変更するが、まずはラシックス投与のみで様子をみていく(メインを減らすのと利尿剤開始を同時にしない)。
⑤尿量減少(濃尿)は皮膚乾燥やturgor低下あれば点滴(ソルデム3A500ml)を5日間追加し尿量を見ていく。高Na血症の場合は5%TZ500mlを1週間追加し改善あれば中止。
⑥尿量減少(濃尿)でも浮腫や皮膚湿潤ある場合は低Albが原因の膠質浸透圧低下による血管内脱水なので点滴を絞っていく(アミノトリパ1号850ml)。急性期病棟なら本来はアルブミン点滴+ラシックス持続投与+トロッカーのケース。
cf)心不全や腎不全による尿量減少は原則は希釈尿である!
⑦褥瘡あればメドレニック1Aを追加する。改善ないときはイントラリポス100ml(+フラッシュ用生食)を週1回投与する。
⑧茶色嘔吐あれば内服中止し、NGtube(マーゲンチューブ)を留置し開放、
ガスター1Aもしくはオメプラゾール1A+N/S100mlを10日間投与し改善あれば中止。
⑨点滴が思わぬスピードで入ってしまった時
拘縮が強いとCVカテが折れ曲がり点滴スピードの調節が難しくなる。姿勢や体位の変化で短時間で点滴が入ってしまう時がある(看護師の怠慢ではないので注意!)。血糖測定を指示し、3号液500mlを次の点滴更新までつなぐように指示すると良い。  

療養病院での肺炎、心不全管理

☆療養病院での肺炎管理
・肺炎ばかりを見るのではなく、心不全などほかの併存疾患を注意深く観察する。
・「下腿浮腫や頸静脈怒張が出てきた」「尿量が減ってきた」などは心不全の徴候。
・肺炎が改善してきているにもかかわらず心不全が増悪していくこともある。
・「肺炎が治っていない」ではなく「心不全が増悪した」という可能性も頭に置いておくこと。
・抗菌薬投与が30日、90日、1年後の予後を必ずしも改善しない。
・寝たきり、サルコペニア、低Alb血症などの因子の影響が大きい。
・NHCAPでは広域抗生剤使用が狭域よりも予後を悪化させる。
☆療養病院での心不全管理
・溢水だと血圧が上昇し、脱水だと血圧が下がってくる(∴血圧低下では利尿薬は用いない)。
・脱水でも頻脈になるし、心不全でも頻脈になる。
・尿量減少時の対応:明らかな心不全ある場合は利尿剤→明らかな浮腫がある場合も利尿剤→浮腫がない場合はとりあえず補液負荷を2-3日かけてみる→それでも尿量が増えない場合はCXRで両側(片測ではだめ)のうっ血像がないか確認したり、腎機能や電解質をチェックする→結果、心不全や腎不全であれば利尿剤

CD関連腸炎での隔離の方法と隔離解除について

☆CD関連腸炎での隔離の方法と隔離解除について
・VCM投与終了後に下痢が続くこともあるが、①腸管粘膜障害が改善していない、②腸管内の常在菌の乱れが回復していない、③低蛋白血症による腸管の水分の吸収不全、④蠕動機能が回復していない等によることもある。
・CDのMICは0.5-2μg/mlであり、VCMの腸管内濃度は4000μg/mlなため耐性化は考慮する必要ない。
・VCMを投与してもCDが残ることがあるが、症状が消失した段階で接触感染対策を解除する(CDは健常人の5-25%から検出される)。
・下痢症状が消失していればCDトキシンの再検はせずに隔離解除してよい。
・病棟によっては、CDトキシン陰性を2日連続で確認してから隔離解除とする場合もある。
・CD感染症を発症し回復した症例については隔離解除後も標準予防策(一般的な手洗い、防護用具着用)を行う。
☆CD感染性下痢を疑うとき
・CDトキシンの結果が出るまで時間差があるので、CDを疑う場合はあらかじめカーテン隔離、専用の聴診器などは結果が出る前にしておいたほうが良い。

ALP高値について

☆ALP高値について
・γGTP上昇なければ骨疾患か、生理的。→整形外科コンサルト
・γGTP上昇あり、T-BiL上昇あれば総胆管胆石など考慮。→腹部エコー
・γGTP上昇あるが、T-BiL上昇なければミクロな胆汁うっ滞の可能性ありAMA、M2測定し、上昇あればPBC疑い。→肝臓内科コンサルト
・γGTP上昇あるが、T-BiL上昇なし、AMA陰性、M2陰性であれば薬剤を疑う。→薬剤チェック

胃癌のABC検診

☆胃癌のABC検診
・H.ピロリ抗体価(HP)とペプシノーゲン法(PG)により採血だけで胃癌リスクをスクリーニングする。
・A群:HP-/PG-、B群:HP+/PG-、C群:HP+/PG+、D群:HP-/PG+(D群はピロリ菌が生存できないほど萎縮性胃炎が進行)
・胃癌発生率:A群:年率0%、B群:年率0.1%、C群:年率0.2%、D群:年率1.25%
・ピロリ除菌療法、上部内視鏡はB群以上で必要(D群での除菌は内視鏡所見、UBT、便中抗原から判断)。
・ペプシノーゲンI(PG-I)は胃底腺から分泌、PG-IIは胃全体から分泌される。胃炎ではPG-I、PG-IIともに血中に逸脱するが、ピロリ感染では胃底腺が減少するのでPG-I/PG-IIは低下する。除菌してもすぐにPG-I/PG-IIは上昇しないことに注意。
・PG-I/PG-IIが3以下で陽性(1+)とする。PG-I 50ng/ml以下かつPG-I/PG-II 3以下を(2+)、PG-I 30ng/ml以下かつPG-I/PG-II 2以下を(3+)の判定とする。
・Hピロリ抗体価10U/ml以上を陽性とするが、3U/ml以上10U/ml未満は陰性高値でUBTや便中抗原を検査し陽性であれば現感染とする。
・HP抗体価が陰性(陰性高値でない)でも萎縮性胃炎が進んでいる可能性(D群)もあるが、その確率は0.1%程度と見られている。∴HP抗体価は99.9%は正しい。
・しかし、Hピロリ抗体価が3以下でも胃癌リスクなしとは判定できず、結局GFが必要になる。

S型アミラーゼ上昇時の鑑別

☆S型アミラーゼ上昇時の鑑別
・シェーグレン症候群、ミクリッツ、唾石、ウイルス性唾液腺炎、唾液腺腫瘍、アル中など。耳鼻科受診し鑑別を。
・肺癌や大腸癌、卵巣癌も鑑別に挙がるので、胸部と腹部のスクリーニングをすること。
・胸部CT、大腸内視鏡、骨盤MRIが理想だが、現実はまず胸部X線、便潜血、腹部and/or経膣エコー。
・市販のサプリメントや精神的ストレス、歯ぎしり、やせ、でも上昇するらしい。
・マクロアミラーゼ血症も鑑別に入る。

悪性症候群について

☆悪性症候群について
・急激なドパミン遮断による。Lドーパの急な中止や、抗精神病薬の使用が原因。
・高熱と高CPK血症があるのみで、筋強剛など錐体外路症状や自律神経症状が乏しい場合は一般的な悪性症候群(NMS)の診断基準は満たさない(特徴は手足がガクガクガチガチになり、スッと伸びなくなる。ただし症状がはっきりしない不全型も結構ある。早めにダントリウム入れてもいいかもしれない)。
・じほう社の経管投与ハンドブックではマドパは粉砕可、簡易懸濁可。簡易懸濁では、55℃5分では溶けず、10分を要する。マドパはNGtubeなどから継続するのが無難。
・マドパー3錠なら、急にoffにしても問題ないことが多いが、3日づつ漸減するのが無難。
・悪性症候群を起こすのはマドパー600mgや900mg等、比較的投与量が多い時に見られる。それを突然に中止し、脱水などが加わると起こしやすい。
・CPKは軽く5000~10000を越えることが多い。ダントリウムで回復しても、同じ抗精神病薬を使うと再発する。
・ダントリウムによる筋弛緩作用のために、呼吸不全に注意する必要がある。悪性症候群は基本的に抗精神病薬の中止と補液で対応できることも多い。

免疫抑制、化学療法開始時のHBV再活性化リスク評価について

☆免疫抑制、化学療法開始時のHBV再活性化リスク評価について
・免疫抑制、化学療法を開始する前に、まずHBs抗原を測定しHBVキャリアかどうかを確認する。
・HBs抗原陽性のHBVキャリアは、HBV再活性化の高リスクなため、肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤を投与。
・HBs抗原陰性例は、HBs抗体およびHBc抗体を測定して、陽性であれば既往感染者と判定する。
・HBV既往感染例でも免疫抑制、化学療法を行うとHBVが再活性化するリスクがある。
・HBc抗体、HBs抗体のうちどちらか一方しか測定ができない場合は、HBc抗体をまず測定する。ただし、HBc抗体陰性例でも再活性化が報告されている。ワクチン接種歴が明らかである場合を除きガイドラインに従う。
・HBV既往感染者と判定した場合はHBV DNA量を測定し、原疾患治療を開始する前に、一度肝臓専門医にコンサルトする。
・HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体が陰性であれば、HBVキャリアでも既往感染者でもないため、通常の原疾患治療を行う。
・副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、免疫抑制作用や免疫修飾作用を有する分子標的薬を用いた免疫抑制療法では、治療開始後少なくとも6ヵ月間は、月1回のHBV DNA量のモニタリングが推奨される。
・免疫抑制・化学療法中にHBV DNA量が2.1 log copies/mL(20 IU/mL)以上に増加した場合、直ちに肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤(エンテカビル)を投与する。
・通常、ALT/AST値などの肝機能障害の指標は、HBVの増殖から数ヵ月遅れて上昇する。
・核酸アナログ製剤の効果発現には1ヵ月程度かかる。
・ALT/AST値が正常値を超えて上昇してからでは、HBV DNA量が著しく増加し、核酸アナログ製剤の効果発現がHBVの増殖に追いつかないリスクがあるため、HBV DNAが2.1 log copies/mL(20 IU/mL)以上になった時点で肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤の投与を開始する。
・その際、免疫抑制・化学療法を中止すると、原疾患の病態が増悪する可能性があるため、中止せずに肝臓専門医と相談する。

梅毒検査について

☆梅毒検査について
・STS×,TPHA×:未感染
・STS○,TPHA×:感染初期もしくはBFP(生物学的偽陽性:妊婦、SLE、ワクチン接種後、肝疾患)
・STS○,TPHA○:梅毒(治療開始)
・STS×,TPHA○:既感染(ただしProzone Phenomenonの可能性もあるためSTS定量にてcheckすること。特にTPHA10倍以上の高値の場合)
cf)RPRとTPHAについて
・梅毒検査にはSTS(VDRL,RPR)とTP抗原(EIA,TPHA,TPPA,FTA-ABS)の2つがある。
・RPR(STS,非TP法):梅毒感染で生じるカルジオリピン-レシチンへの抗体を見ており、梅毒感染から3-6週間後に陽性化する。治癒すると低下する。慢性炎症(Tb、肝炎、RA、SLE)、高齢者、ウィルス感染(ヘルペス、HIV)、マラリア、予防接種、妊娠でも陽性になる(BFP)。
・TPHA:梅毒に特異的な抗原を見ており、梅毒感染から6週間後に陽性化する。治癒しても陽性が持続する。
cf)BFP(生物学的偽陽性)の原因:抗リン脂質抗体症候群、急性ウイルス感染症(EBV, 肝炎, 麻疹など)、マイコプラズマ感染症、クラミジア感染症、予防接種、妊娠など、他にはHIV、悪性腫瘍、頭位分娩、じんま疹、皮膚炎、脳梗塞、SLE
cf)高齢者の梅毒検査について(RPR+、TPHA+の場合)
・高齢者なら多くの場合は活動性がないため治療は不要。
・原則はSTS(RPR,非TP法)の定量16倍以上であれば無症状でも治療することが望ましい。第3期以上ではサワシリンカプセル250mg6錠分3もしくはミノマイシン100mg2錠分2を8-12週間投与し、投与終了後半年後にSTS(RPR)定量を測定し8倍以下なら治療成功。8倍以上なら治療失敗。
注)RPR+,TPHA+の場合でも現感染とは限らない
・RPR+,TPHA+でもRPR<8,TPHA<280の場合は治癒後の梅毒の可能性が高い(やんちゃな夫から妻がもらった場合が多い)。FTA-ABS IgMで確認してもよい。
cf)梅毒患者の針刺しの感染予防
・ペニシリンG、アンピシリンの常用量を2週間内服する。

感染対策(インフルエンザ、ノロ、MRSAなど)

<感染対策(インフルエンザ、ノロ、MRSAなど)>
☆インフルエンザ対策
・潜伏期は2日間で、感染性のある期間は発症1-2日前から発症後5-7日の間。潜伏期間から感染力がある。
・迅速検査の感度50-70%、特異度90%なので、検査陰性でも絶対とは言えない。インフルエンザ疑いなら陰性でも感染対策をする。
・インフルエンザ流行期の対策
1)外来では、①呼吸器症状ありならマスク着用、②手洗い励行、③インフルエンザが疑われる場合は待合室を分けるか、診察の順番を工夫する、④感染者用の診察室を用意する、⑤風邪症状がある場合は面会を控えるように指導する
2)入院患者では、①インフルエンザ疑いの段階で個室対応(難しい場合はカーテン隔離)⇒翌朝に発熱続けば迅速検査の指示を出す、②患者が外に出るときはマスク着用、手指衛生を徹底してもらう、③入室時はマスク着用、手指衛生を確実にする。
3)発症した患者では、①飛沫感染対策を発症後7日以上経過したら解除(あるいは発症後5日かつ解熱後2日、ただしこれは学校保健法で世界的には症状出現から5-7日間)
4)暴露した患者では、①発症者とは別の個室で管理(原則5日間→潜伏期間が長くて5日間なので)、個室管理が難しい場合は、ワクチンを接種していなければタミフルの予防投与を行う(病院負担)。
5)職員では、就業制限は原則として発症の日から最低5日間(発症後5日間かつ解熱後2日)→本当は7日間だが、現実的には5日間となる
注意)療養病床でインフルエンザ流行時に個室管理が推奨される場合
・咳やくしゃみの頻度が高い患者
・酸素投与中の患者
・人工呼吸管理下にある患者 


☆ノロウィルス感染対策
・アウトブレイクしやすい理由は、①感染力が強い(100個以下の少ない量でも感染が成立)、②アルコール無効
・ウィルス性胃腸炎(冬季下痢症)はノロウィルスだけではない。アデノウィルスやロタウィルスもあり、感染力は高い。
・診断はPCRがベストだが、迅速検査は感度50%、特異度85%(→陰性でも否定はできない、陽性者のみに対策していると蔓延しやすい)。検査会社の感度、特異度はあてにならない。臨床研究での感度、特異度とは違う。
・潜伏は1-2日間、下痢の症状が消失してから7日間、免疫不全者の場合は2週間はウィルスが排出される
・職員が冬季下痢症になった場合は症状消失まで就業禁止とする(症状消失後7日間は排出があるため拡散防止に努めること)。
・12-3月に急激に生じた嘔気嘔吐、腹痛、水様性下痢の3つのうち2つを満たせばノロウィルスに準じた対策をする。
・吐物、糞便の処理方法(ノロウィルスに限定しない)
1)手袋、エプロン、マスクを着用
2)吐物の周囲2mくらいを汚染範囲と考えて処理する
3)吐物の周囲2mくらいを使い捨てのペーパータオルで外側から内側に向けて静かにふき取る。ふき取ったペーパータオルはビニール袋に入れて感染性廃棄容器に廃棄する。
4)ふきとった場所を1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませたペーパータオルでふき取る(次亜塩素酸Naは金属腐食性があるので後で水拭きをしておく)
5)新しい次亜塩素酸Naをしみ込ませたペーパータオルで靴やスリッパをふき取る
6)汚染範囲の清掃を清掃担当者に依頼する。

☆MRSAを始めとする多剤耐性菌の理想の感染対策
・具体的な感染対策
1)アルコールによる手指消毒を徹底する。
2)感染と保菌は区別せずに個室管理し、入室者はエプロン、手袋、マスク(当然、部屋から出るときはマスクも含め廃棄する)着用。
3)保菌者の手や服にも付着しているが、周りの机など環境表面にも付着している。患者に接しなくても環境表面から付着するため、大部屋の別の患者を診察する時にも逐一アルコール消毒をする。
4)MRSAに効果のある薬剤を終了して48時間以上、もともとMRSAが出た部位および鼻腔のそれぞれが3回連続で培養陰性になれば隔離解除。
5)5分に1回は無意識に顔を触っているので、マスクで伝播を防ぐ目的もあるため、MRSAは空気感染や飛沫感染はしないが、マスクは必要。MRSA保菌者の診察をした69%の確率で汚染される。白衣は毎日洗濯する。
・バクトロバン鼻腔用軟膏2%の塗布方法
用法・用量:通常、適量を1日3回鼻腔内に塗布する。
1)綿棒の先にチューブからあずき粒程度の薬剤をとる。
2)まず、片側の鼻腔内に塗布し、次にもう片方の鼻腔内にも同じ量を塗布する。
3)薬剤を均一に伸ばすため、塗布後、両側の鼻翼の上からよくマッサージする。
注意)MRSA除菌の必要性
・現実的には療養病棟での看取り患者のMRSA除菌はしない。
・急性期ではMRSAの除菌をせずに、患者が死亡した場合敗訴する可能性がある。
「市民病院に入院した患者がMRSA敗血症を発生し、転院先の大学病院で死亡。市民病院の担当医らのMRSA感染予防を怠った過失、当該過失と死亡との因果関係を認めた高裁判決」 福岡高等裁判所平成18年9月14日判決 判例タイムズ1285号234頁


☆多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染対策
・定義はIMP,AMK,CPFXの3剤耐性
・対策は保菌、感染問わずに全例個室で接触感染予防策。
・準MDRP(3剤中2剤に耐性ある場合)も全例個室にするべき。
・G陰性桿菌(緑膿菌、アシネトバクター、セラチア、大腸菌)は毒性が強く、エンドトキシン産生により重症化しやすい。耐性化すると抗菌薬が効かず危険。ERDP、ESBLも含め、多剤耐性グラム陰性桿菌をIMP,CPFX,AMK,CAZ(セフタチジム)のうち2剤耐性(R,I)のものと定義し、個室管理すべき。
・多剤耐性菌が出た時のカルテ記載:ご提出いただきました〇〇検体より院内規定による多剤耐性グラム陰性桿菌が検出されております。接触感染対策の開始をお願いします。
・具体的な感染対策:
1)患者診察、処置前後でのアルコールでの手指衛生の徹底
2)患者さんの使用する器具の固定(聴診器など)
3)患者さんの手指衛生の徹底を指導
4)個室にできるなら、個室管理とし、エプロン+手袋+マスク着用。

cf)多剤耐性菌について
・多剤耐性菌の種類
MRSA
多剤耐性緑膿菌(MDRP)
多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
ESBL産生グラム陰性桿菌
カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)
・日本に限らず訴訟、賠償のNO1はMRSA!→血液培養2セットは必ずとること
・感染症法で全数報告(国、県)が必要な耐性菌
1)VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
2)VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)→日本では1例もない、Laboエラーのことも多い
3)CRE(カルバペネム耐性腸内細菌)
4)MDRA(薬剤耐性アシネトバクター)*
5)MDRP(多剤耐性緑膿菌)やMRSAは報告義務なし
・多剤耐性の定義:
IPM,AMK,CPFX全てにRであれば多剤耐性とする
IPMのMIC>16
AMKのMIC>32
CPFXのMIC>4

医療区分について

☆医療区分について
・医療区分によって入院基本料(マルメ料)が変わる。ただし、療養病棟でも人工呼吸器は出来高算定。
・PEGやEDtubeで経腸栄養しているだけなら区分1。
・CVあれば区分3。
・モニター(医師及び看護職員により常時監視および管理している状態)あれば、モニタ装着していた日数だけ区分3。ただし、吸痰や酸素投与が必要。モニター単独なら区分2。
・末梢点滴だけでも、1日1000ml以上していれば実施した日付のみ区分3(ただし1か月に7日まで)。
・「24時間点滴加療が必要」は末梢点滴を指していて1週間しかできない。IVHの場合は「中心静脈点滴を行っている」だけでよい(2つ同時にはできない)。
・1日8回以上の吸痰あれば区分2(吸痰回数はバイタル表に記載あるはず)。
・気切しているだけなら区分2、発熱伴えば区分3。
・画像、採血にて肺炎診断した上で治療しているなら区分2(治療期間のみ)。
・尿検査を実施し細菌尿もしくは尿中WBC10個以上で尿路感染で治療しているなら区分2(治療期間のみ)。
・酸素投与は3L以上なら区分3、2L以下なら区分2。ただし、1か月全て区分3の酸素療法では査定されることが多い。
・パーキンソン病あれば区分2、もやもや病や脊髄小脳変性症など特定疾患あれば区分2。
・褥瘡治療している場合は区分2(治療期間のみ)。仙骨部褥瘡など病名に部位の記載が必要。
・週3回、1日3回以上血糖測定していれば血糖測定した日付のみ区分2(1日1回だけなら毎日でも算定されない)。
・区分1~3が混ざっているときは平均をとって、一番多い区分に合わせる。

ペースメーカー植え込みや胃瘻患者の死後対応

☆ペースメーカー植え込みや胃瘻患者の死後対応
・皮膚切開し、ペースメーカー本体を取り出す。本体は皮下に糸で固定されていることが多いが、大胸筋の内側に固定されて皮膚の上からは触れないこともあるので注意する。リード線は引き抜かなくてよい。本体からハサミで切り離せばよい。
・摘出する前に家族にペースメーカーを摘出すること、皮下出血認める場合があることなどを説明する。摘出しない場合は火葬時に破裂することがあり、葬儀業者にペースメーカーがあることを伝えることを説明する。破裂するのは火葬開始後30分以内のことが多い。
・取り出した本体は感染廃棄物として処理する。
☆死後の胃瘻処置
・胃瘻チューブの根本をハサミで切って胃内に落とす。受針器と丸針で縫合し胃瘻孔をふさぐ。ピンク針ではやりにくいので丸針と受針器を使うとよい。

ワクチンについて

<総論>
☆ワクチンの種類
生ワク:ムンプス、風疹、麻疹、ポリオ、結核、水痘(生きるのは無風の進歩の結果です)。他は不活化かトキソイド。
☆接種方法
・筋注:HPV、経口:ロタ、皮内注:BCG、他は皮下注
・原則は不活化、トキソイドは局所反応が起こしやすいため深い場所に接種する必要があり、免疫反応が起こりにくいため血流の多い筋肉に接種するべきだが、筋注を指定しているのは現状はHPVワクチンのみ。従って、不活化、トキソイドは皮下深くに接種する。生ワクは局所反応が起きにくいため皮下注でよい。
・皮下注:上腕伸側の皮膚をつまんで30度の角度で針は16mm。筋注:肩の三角筋に垂直に針は25mm。
cf)橈骨神経は上腕伸側の中1/3において背側から腹側に斜めに下降するので、この部位での接種は橈骨神経の損傷を起こす危険性がある。従って接種部位は上腕伸側の上1/3または下1/3が適切である。
☆接種間隔
・不→不、不→生は1週間、生→不、生→生は4週間あける。
・同時接種は左右の上肢に1回ずつ別々に接種する。同側なら3-5cmあける。製剤同士は絶対に混ぜないこと。
・同日接種(朝に検診で接種し、その後来院し他のワクチンを接種)は自治体によっては2回目の保険が通らないこともあり。
☆副反応
①軽微なもの:局所反応:疼痛、腫脹、発赤、硬結、全身反応:発熱、倦怠感、頭痛→数%にみられ、自然軽快する
cf)インフルエンザワクチンによる発熱は当日~翌日、37度台~39度台まで様々。インフルエンザワクチン後に発熱することがあるが、抗体産生まで1週間くらいかかるので、ワクチンによる発熱かインフルエンザ感染による発熱かわからない。
②生ワクによる原疾患類似の症状:麻疹、風疹ワクチンで発熱、全身の発疹→2、3日で軽快し、本来の麻疹、風疹ではないので伝染はしない
③重篤なもの:アナフィラキシーショック(数千~数万分の1、接種後30分以内)、ADEM(急性散在性脳脊髄炎、数万~数十万分の1)、血小板減少性紫斑病
☆接種禁忌
①重篤な急性疾患
②当該ワクチンに対してアナフィラキシーショックの既往ある場合
③免疫抑制状態:先天性免疫不全、ステロイド、免疫抑制剤、抗癌剤使用中
④半年以内の輸血、γグロブリン製剤の使用歴(生ワクのみ禁忌、免疫応答が起こらない)
⑤妊娠中の生ワク(特にMRワクチン)
⑥卵アレルギーでの黄熱ワクチン(インフルエンザワクチンは重篤なアレルギーでなければ接種可)
⑦エリスロマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンアレルギーに対する麻疹、風疹、MR、ムンプス、水痘ワクチン
・37.5℃以上の感冒や軽微な感染性腸炎は数日は接種見合わせ、麻疹後は4週間、風疹、水痘、ムンプス後は2-4週間、伝染性紅斑後は1-2週あけて接種するが医師の判断で接種も可能
・定期接種の重篤な副反応は予防接種法で補償、任意接種はPMDA(医薬品医療機器総合機構)にて保障される
cf)ワクチンの目標抗体価
麻疹EIA IgG 8-10倍以上、SRL 5-8倍以上
風疹HI IgG 16倍以上
水痘EIA IgG6-8倍以上
ムンプスEIA IgG 6-8倍以上
(医療従事者の場合は異なることがあるので要注意)

<各論>
☆B型肝炎(任意)
・周産期感染(垂直感染)は95%がキャリア化→母子感染予防事業で0.024%まで低下
・乳幼児、小児に周囲のキャリアからの唾液感染、成人以降はSTDとして水平感染することあり、定期接種化が望ましい
・水平感染では30%が急性肝炎(うち2%が劇症化し致死率は70%)、数%がキャリア化
・定期化されたHib、小児肺炎球菌ワクチンと同時に2か月以降に接種すべき
・本来は筋注が望ましいが、皮下深く接種する
☆Hib、小児肺炎球菌(定期)
・髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎を予防する
・小児肺炎球菌は2013年から13価に変更(それまで7価)
・Occult bacteremia(高熱だが全身状態が良好で感染巣が不明な小児での菌血症)はHib/肺炎球菌ワクチン2回接種児ではリスクは1%未満、接種なければ10%あり
☆破傷風(定期:DPT)
・土の中にいるClostridium tetaniから感染する
・100人/年発生、発症すると致死率は20-50%
・DPTワクチンは乳幼児期に4回接種し、11歳でDTを1回接種するが、10年ごとにブースター接種が必要
・汚染された外傷では、
 DPT接種なしか不明なとき:テタノブリン筋注、その場で対側の三角筋にTd1回接種、1M後に2回目、6-12M後に3回目 
 DPT接種ありで最終接種から5年以上ならその場でTd1回接種、5年未満なら予防必要なし
(定期化されたのは昭和43年以降なので昭和43年以前に生まれた人はDPT接種なし)
☆百日咳(定期:DPT)
・新生児から乳幼児の致死率が高い
・ワクチンは生後3か月以降
・成人のアウトブレイクから感染するため周囲の人はワクチンで防御する必要あり
・アメリカでは2011年のアウトブレイクを受けて、全成人と妊婦(不活化なので接種可)にDPTワクチンを接種を進めた
・DPT0.5mlを成人に接種すると発熱、局所反応(自然軽快するが)が起こりやすいので0.2mlにし、0.2mlで十分に免疫力を得られる(Tdapは日本は未承認)
☆麻疹、風疹(定期:MR)
・日本は麻疹輸出国、麻疹は年間300人、先天性風疹症候群は年間16人発症している
・南北アメリカは麻疹、風疹を排除できている
・1歳と就学前(5,6歳)の2回接種する
・生ワクなので妊婦には禁忌
cf)ワクチン接種後に抗体価が上昇しない場合
・風疹ならEIA IgG8.0未満、ムンプスなら4.0未満であれば再接種。
・2回目の接種でも抗体上昇を認めないなら接種製剤を変える(違う会社のものにする)と効果がある。
・風疹ワクチン接種後2ヶ月間は避妊が必要だが、風疹ワクチン接種後に妊娠が判明した場合でも、これまではワクチン接種による先天性風疹症候群の報告はない。
☆日本脳炎(定期)
・ブタからアカイエカを介して感染
・ほとんどは不顕性で発症するのは0.1-1%。しかし発症すると致死率は20-40%、神経学的後遺症は45-70%
・ワクチンは6か月から接種可能だが、日本では推奨接種年齢が3歳となっている(しかし、現実は新生児、乳児期にも蚊に刺されるリスクあるので6か月で接種するのが望ましい)
・九州と四国地方での報告が多い
☆水痘(任意)
・空気感染する上、90%が顕性感染なのでアウトブレイクを非常に起こしやすい
・致死率は10万人あたり1-14歳で1人、15-19歳で2.7人、30-49歳で25人
・多彩な合併症:二次性皮膚細菌感染、二次性細菌性肺炎、一過性小脳失調、髄膜炎、2%未満で20週以下の妊婦で先天性水痘症候群、将来の帯状疱疹のリスク
・ワクチンは2回接種が望ましい(13歳未満は3か月間隔、13歳以上なら4週間空けて)
・通常は1歳で1回目、就学前(5,6歳)で2回目
・暴露後接種が有効なので、水ぼうそうの児に接触した場合はすぐに接種する(特に兄弟の一方が発症したらもう一方に必ず接種する)。72時間以内なら90%、5日以内なら70%で発症を防げる。
☆ムンプス(流行性耳下腺炎)(任意)
・特に問題になるのは難聴で年間650人、不顕性によるものは年間2500人。片側だが、聴力予後は極めて悪い。
・水痘以上に多彩な合併症:髄膜炎、脳炎、精巣炎、卵巣炎、乳腺炎、膵炎、流産、心筋炎、腎機能障害、小脳失調、ギランバレー症候群
・2回接種が必要。1回目は1歳、2回目は就学前(5,6歳)。キャッチアップは4週間空けて行う。
☆HPVワクチン(定期)
・不活性化で初めて筋注指定
・子宮頸部上皮内腫瘍を95%減らしたが子宮頸癌を減らしたevidenceはない
・4価ワクチンでは尖圭コンジローマも予防できる
・子宮頸癌関連の16価の血清型のうち2価もしくは4価のみの予防のため、20歳以降の子宮頸癌検診の受診が必要
・2013年6以降は接種後の重篤な有害事象が複数報告があり定期接種のままだが、積極的な接種勧奨は差し控えられている
・ワクチンと有害事象の因果関係は不明
・感染経路はSTDのみ。sexually activeでなければすぐに接種が必要というわけではない。
☆成人肺炎球菌ワクチン(任意)
・成人用はPPSV(Pneumococcal Poly Saccharide Vaccine/13価/ニューモバックス)、小児用はPCV(Pneumococcal Conjugate Vaccine/7価/プレベナー)。
・PPSVはもともと小児用として開発されたが、成人でのみ抗体価を上げた。PCVはPPSVの製剤に加工し免疫反応を起こしやすくしたもの。
・PPSVが市中肺炎を減らしたというevidenceはない。IPD(肺炎球菌関連の髄膜炎や敗血症)を減らす。
・肺炎は予防しないが重症化を防ぐワクチンであると理解する。
・老健施設でのHNCAPを減らしたevidenceはある。
・無脾の人はIPDのリスクが高いので必ず接種する。2歳以上であればPPSVの接種は保険適応あり。
・2回目以降の接種は禁忌ではないが、局所反応や全身反応が強く出ることに注意する(以前は再接種は禁忌だった)。
・無脾の人で以前接種した人は5年以上経過したなら65歳以上で2回目接種する。
・インフルエンザ流行期には同時接種も可能だが、現実的にはインフルエンザワクチンの1週間後、必要あれば肺炎球菌ワクチンを接種。
・呼吸器学会のアルゴリズムでは65,70,75,80…歳(5の倍数)ならニューモバックスを定期で接種し、5年以上あけて再接種(任意)、中途半端な年齢ならプレベナーを接種し、次の5の倍数の年齢時にニューモバックスを定期(2回目以降のニューモバックスは任意)で接種する。

2014年9月25日木曜日

カテ熱(CRBSI)について

☆カテ熱(CRBSI:catheter related blood stream infection)について
・カテーテル刺入部の排膿、発赤、圧痛あればすぐにカテ抜去(しかし、このような場合は稀)。septic shockの場合は感染源を疑うなら血培採取後、カテを入れ替えて広域の抗生剤(MEPM+VCMあたり)、shockの治療に入る。血行動態が安定しているなら抗生剤を開始しながら血培の結果を見て判断してもよい。通常はカテ抜去だけで熱が下がる。
⇒カテが入っている人の熱で他に熱源がなさそうであればカテ抜去し、末梢点滴+抗生剤(S/A等)で様子見るのが基本。
・sepsisを疑う場合、熱がないから血培をとらないのはナンセンス。低体温はより危険。
・カテーテルが入っていて、熱源がはっきりしない場合はカテーテル感染を必ず疑うこと。
・カテ熱で刺入部に発赤がみられるのは3%程度。原因菌の8割はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌という弱毒菌のため、局所に炎症を生じにくい(∴抜去だけで熱が下がる)。
・カテ熱で状態が悪く、カテ先培養と血液培養で同じ菌種(グラム陰性桿菌、MRSA、カンジダsp.、黄色ブドウ球菌、腸球菌、真菌、抗酸菌など)が同定された場合は、カテ抜去で末梢で様子見るのがベター。違う部位からカテ挿入してもいいが、ガイドワイヤーを使っての入れ替えは禁忌。
・カテ熱(カテーテル関連血流感染症:CRBSI)の診断基準:
基準(1):1回もしくは複数回の血液培養から病原体が確認される。さらに 血液から培養された微生物は他の部位の感染に関係がない
基準(2):以下の症状や徴候が少なくとも1つある
①発熱(>38℃、熱型の特徴はspike fever)、悪寒戦慄、低血圧
②徴候や症状そして陽性の臨床検査結果が他の部位の感染に関係がない
③一般の皮膚汚染菌(類ジフテリア、バシラス属、Propionibacterium属、CNS、ビリダンス群溶連菌、ミクロコッカス属)が別々の機会に採取された2回以上の血液培養検体から培養される。
 基準(3):微生物学的診断
①カテーテル先端の培養(定量or半定量)の検出菌=末梢静脈血からの検出菌
②カテーテル採血培養が末梢静脈血培養よりも2時間以上早く陽性になる
③カテーテル採血培養:末梢静脈血培養≧5:1
④カテーテル挿入部中心静脈血の定量培養(一般細菌≧100CFU/ml,真菌≧25CFU/ml)
cf)カテ熱の治療について
・血培2セット、カテ先培養を採取。
・まずは抜去する(大抵は抜去するとすぐに解熱する)。
・最大の原因菌は耐性ブドウ球菌で、βラクタムは耐性あるため、第1選択はバンコマイシン1g12時間おき。血液培養の結果を見てde-escalationする。
・超重症患者の場合はバンコマイシン(VCM)、メロペン(MEPM)、ミカファンギン(MCFG)を併用する。
cf)療養病院でのカテ熱
・療養病院でのカテ熱のほとんどは風呂熱である(入浴時にCVの保護テープ内にお湯が入り込む)
・CVのナート部位のアイテル(膿)は非感染性で針反応と思われるものもある。
・フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
・ポート感染疑うときは、すぐ抜去するのではなく、ポートはヘパロックし末梢点滴と抗生剤に変更してみる(ヘパロックは週1で交換する)。
cf)CVカテーテル閉塞時の交換について
・皮膚をカテーテルごとイソジン消毒し、覆い布をかける。
・ハサミでカテーテルの途中を切って、清潔操作でガイドワイヤーを挿入し、固定の糸を抜糸してからカテーテルを抜去する。
・その後はCV留置と同様の操作を行う。
参考1)
・5大医療感染症はHAP/VAP(ハップバップ)、CAUTI(カウチ)、CRBSI、SSI、CDI。CRBSIはCVCが原因の血流感染。診断には血液培養陽性が必須。カテ先培養は定量でなければ意味がない。他のfocusから菌血症を起こし、CVCに菌が付着によるものもある。カテーテル逆血培養1セット、末梢静脈から1セット採取し、カテーテル逆血培養の方が菌量の方が3倍以上多いか、カテーテル逆血培養の方が2時間以上早く陽性になればCRBSIと診断できる(菌量の比較は通常の検査室ではできないため)。診断にCVC抜去は必須ではない。末梢静脈カテーテルによるCRBSIも侮れない。菌はBIOFILMを形成して人工物に付着する。抗菌薬はBIOFILMの表面に効果あるだけでBIOFILM内部の菌には届かない。原因菌は表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、GNRの中でも特にSPACE(セラチア、緑膿菌、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)。SPACEは急変する可能性が高い。予防はマキシマルバリアプリコーションが大切。
参考2)
・CVC抜去せず高張液を浸透圧比1の等張液に変更(ソリタT3やソルデム1)するだけでも解熱することが多い。逆に高張液(ビーフリードやフィジオゾール3号)ではバイオフィルム内に浸透し細菌増殖の原因となる。
・CVC抜去しても解熱しない場合は人工弁などが無くても血管内の粥腫などにに感染がついているのかも。
・CVC穿刺困難な場合はCVCをガイドワイヤーを使って入れ替えるのも方法だが邪道。
カテ感染疑いで血培でカンジダが1セットで陽性になった場合
・酵母様真菌とあれば多くはカンジダ。
・βDグルカン陰性でも真菌感染は否定できない。
・カテ感染疑い+状態不良の場合、カンジダ、黄ブ菌、腸球菌は2セット中1セットでも陽性なら本物でコンタミではないと考えて治療開始する。
・血培からカンジダが採取された場合、通常ならコンタミであるが、カテが入っていて抜去しても熱が下がらない場合や、通常の抗生剤で効果がないときは抗真菌薬を投与する。
・逆に、IVH中でもなく、ケモ中でも免疫不全でもない場合は深在性真菌感染症の可能性はほぼない。
・カンジダ血症のリスク:免疫不全、手術後、ICU、CVC留置中、広域抗生剤使用、APACHEスコア高値、急性腎不全、未熟新生児、外傷、熱傷、埋め込み式人口装置、H2ブロッカー使用、カンジダ定着状態
・カテ感染の4大起炎菌:ブ菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ
・カンジダ感染症:IE、化膿性血栓性静脈炎、骨髄炎、髄膜炎の他に網膜炎も忘れずに
・カンジダ感染では眼底鏡を必ずチェックする
・C.albicansはフルコナゾール(FLCZ)が有効だが、C.glabra、C.kruseiはフルコナゾール無効なことがあり、ミカファンギン(MCFG)、アンホテリシンB(AMPH-B)を使う。クロモアガー培地で3つが判別できる。
cf)抗真菌薬について
・ファンギゾン(アンホテリシンB:AMPH-B)は25-50mg(0.5-1V)を5%ブドウ糖250-500mlに溶解して3-6時間以上かけて投与する必要がある(5%ブドウ糖で0.1mg/mlとする)。
・ファンギゾン自体に発熱の副作用があることに注意する。
・ただし、ファンギゾンは腎障害など副作用も強いので、ジフルカン(フルコナゾール:FLCZ/アゾール系)50-100mg(どちらも50mlの静注液)+生食100ml1日1回投与が無難。1日最大量は400mgまで。CCr50以上は通常用量、50未満は半量(HD時はHD終了後に通常用量)。
・ジフルカンはC.albicansには効くが、C.glabrata,C.kuruseiには無効。クリプトコッカスには効くがアスペルギルスには無効。
・1日2回だがフロリードF注(ミコナゾール:MCZ/アゾール系)200mg+生食100ml1日2回(ファンギゾンより副作用少ない)もファンギゾンより副作用少ない。併用禁忌はワルファリン、ピモジド、キニジン、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ブロナンセリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、リバーロキサバン、アスナプレビル。
・アゾール系が無効な場合はキャンディン系のファンガード(ミカファンギン:MCFG)を使う。

2014年9月24日水曜日

CEA軽度上昇について

☆CEA軽度上昇について
・健診にてCEAが軽度上昇で精査依頼されることがある。
・健診日と受診日が開いている場合は採血して再検する。
・CEAが10ng/ml以下でも検査希望ならGF、CF、胸腹部CT、甲状腺機能をチェックする。異常なく、さらなる検査希望であれば乳腺、婦人科を紹介する。
・CEA10ng/ml以上ならGF、CF、胸腹部CT施行し、毎月のCEAフォロー。
・自費診療も厭わないならPETをしてみるのがいいだろう。
cf)ちなみに、自費ではGFで9000円、CFで25000円、腹部USで6000円、腹部CTで9000円位。
・喫煙、下痢、糖尿病、加齢、気管支炎、慢性膵炎、慢性肝炎、肺結核、クローン病、胃潰瘍、萎縮性胃炎、肺線維症、腎不全、子宮内膜症でも偽陽性になる。
・正常人の0.3%で10ng/mlを越える。潰瘍性大腸炎4.0%、肺疾患5.0%、肝硬変7.0%、腎疾患10.0%のほか直腸ポリープや肝炎で2%以下で10ng/mlを超えることがある。
・悪性疾患では大腸癌54.7%>肺癌24.5%>胃癌21.6%>乳癌16.2%>卵巣癌12.2%で10ng/ml以上となる。
・喫煙者は0.6%が10ng/mlを越えるが、通常は10ng/ml以下で、5ng/mlを越えるのは6.9%である。

2014年9月23日火曜日

IVH後に肝機能異常をきたした場合

☆IVH後に肝機能異常をきたした場合
・アミノ酸負荷によるものが多い(BUN↑)
・以下のように変更していき、肝機能をフォローしていく
①フィジオ35 500ml(うち1本にはシーパラ1Aを混注)を3-5日間
②フィジオ35 500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日3回(うち1本にはシーパラ1Aを混注)を3-5日間
③ビーフリード500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日1回、フィジオ35 500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日2回を3-5日間
④ビーフリード500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日2回、フィジオ35 500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日1回を3-5日間
⑤エルネオパ1号1000ml、フィジオ35 500ml+50%ブドウ糖20ml5Aを1日1回を3-5日間
⑥エルネオパ1号1500mlを3-5日間
⑦エルネオパ2号1500mlに変更

2014年9月22日月曜日

PSAについて

☆PSAについて
・4ng/ml未満は前立腺がんは否定的。
・4-10はgray zone。F/T比(遊離型/全PSA)が0.15以上ならBPHや前立腺炎の可能性が高い。
・10以上は前立腺がんの可能性が高い。
・50-64歳は3ng/ml以下、65-69歳は3.5ng/ml以下、70歳以上では4ng/ml以下が正常値。
・これらを超えてくるようであれば泌尿器科受診を。
・根治的前立腺全摘術後であれば測定以下になるはず(でなければ全摘ではない)。その後にに0.2ng/mlを超え、1ヵ月後にも連続して0.2以上であれば再発と考える。泌尿器科受診を。

2014年9月21日日曜日

浮腫の原因

☆浮腫の原因
注意)溢水か脱水か
・下肢末端に浮腫があっても溢水とは限らない
・低Alb血症にて浮腫を起こしていても皮膚乾燥あれば溢水ではない
・下肢末端だけの浮腫かつ皮膚乾燥なら利尿剤は必要ない

→あきらかな心不全の既往がない限りは体格小はアミノトリパ1号850ml、体格大はフルカリック1号1000mlくらいから開始し、下肢全体の浮腫が来たらラシックス1A+生食100mlなど追加、皮膚乾燥出てくれば、点滴量を追加していく(療養病院の場合)
原因不明の下肢浮腫の3/4は静脈うっ滞やリンパ浮腫。心不全、DVT、骨盤内悪性腫瘍をとりあえずは否定することが大切。
<全身性のことが多い>
・肝機能、腎機能、心機能をチェックする。
・Albは2.5以下であれば浮腫の原因になりえる(肝疾患、蛋白漏出性胃腸症、低栄養)。
・薬剤が原因になることもある。例:NSAIDs,Ca拮抗薬,甘草(漢方),Na(抗生剤の点滴),ステロイド,リリカ,ACEI,抗がん剤など
・甲状腺機能低下症
<片側性のことが多い>
・深部静脈血栓症:腫脹が中心、両側性のこともある
・蜂窩織炎:発赤や熱感、疼痛が中心
・リンパ浮腫:皮膚が硬い、下肢挙上で改善しない、骨盤内の癌や乳がん手術、リンパ節郭清が原因。軟部組織感染を繰り返しやすいのでフットケアが重要(下肢挙上や弾性ストッキングも有効だが静脈うっ滞ほどは有効ではない)
・静脈うっ滞:皮膚は軟らかい圧痕性、毛細血管拡張>静脈瘤>浮腫>色素沈着、静脈うっ滞性皮膚炎>潰瘍。車椅子や臥床の時間が長いことが多い。患肢挙上やマッサージ、弾性ストッキングが有効。
cf)浮腫の鑑別:
①脛骨前の浮腫を押しても直ちに戻る場合(non-pitting edema):リンパ浮腫(直腸がんや婦人科領域の悪性腫瘍)、甲状腺機能低下症、血管性浮腫(毛細血管透過性亢進)
②圧痕が5秒程度残る場合(fast edema):低Alb血症(2.5g/dl以下、Albが低いほど間質の水分が増えて圧痕がより速く戻る)→低栄養、ネフローゼ、肝硬変
③片側の浮腫:蜂窩織炎(訴えの割には皮膚所見が乏しい場合や急速に広がる場合は壊死性筋膜炎を疑うこと)、DVT、リンパ浮腫(解剖学的に左総腸骨静脈は右総腸骨動脈に圧迫されているため、左下肢は生理的に浮腫が生じやすい)
④両側の浮腫:腎不全、肝不全、心不全、甲状腺機能低下症
⑤眼瞼の浮腫:下眼瞼のみなら心不全、全周性なら低ALB血症
⑥手背の浮腫:RS3PE(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)症候群による左右対称性の滑膜炎による圧痕性浮腫
⑦口唇の浮腫:血管性浮腫(遺伝性血管性浮腫、Quincke浮腫、好酸球性血管性浮腫)、薬剤誘発性血管性浮腫→「喉の違和感」 「呼吸困難」の有無をチェックし、ペニシリン系抗菌薬、降圧薬(ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、アスピリンなどNSAIDs服用歴ないかチェックする
⑧Ca拮抗薬、NSAIDs、甘草などは浮腫の原因となりえる。
⑨車椅子や寝たきり状態では下肢筋肉のポンプ機能が低下し、不動性浮腫やchair edema、麻痺側の静脈はうっ滞しやすい。

2014年9月20日土曜日

酸素指示

☆酸素指示
①通常の場合:
「SpO2 93-97%を維持するように酸素増減」
もしくは、
「SpO2 90%未満ならO2開始。90%以下なら1Lずつup、97%以上なら1Lずつdown。Max10L、適宜offも可。」と記載する。
酸素
~4L:カヌラ
5~7L:マスク
8L~:リザーバーマスク
(*気切の場合は当然ながらこの指示はいらない)

②COPD既往ありの場合:
SpO2 88-92%を維持するようにカヌラ0.5Lずつ酸素増減。5L以上は以下の通り変更。
~4L:カヌラ
5~7L:マスク
8L~:リザーバーマスク
cf)酸素指示は正常ならSpO2:93-97%、COPDなら88-92%を保つように酸素増減が正しい。
理由:SpO2 98%=PaO2 100mmHg、SpO2 98-100%=PaO2 100-500mmHg⇒SpO2≧98%では高酸素血症が生じている可能性があるため、少なくとも97%以下に制限する。高酸素血症はCO2ナルコーシス、活性酸素による肺傷害、吸収性無気肺などの有害事象リスクがある。重症患者において高酸素血症は死亡リスクが増加する報告が多数あり、低酸素血症よりも死亡率が高まる報告も複数ある。

2014年9月19日金曜日

終末期の予後予測ツール

終末期の予後予測ツール
<PaPスコア(Palliative Prognosis Score)>
①臨床的に見ての予後:1-2週なら8.5点、3-4週なら6.0点、5-6週なら4.5点、7-12週なら2.5点、13週以上なら0点(ここは分からない場合はPPIを使うと良い)
②Karnofsky Performance Scale:10-20なら2.5点、30以上なら0点
③食欲不振:ありなら1.5点、なしなら0点
④呼吸困難:ありなら1.0点、なしなら0点
⑤白血球数(/mm3):11000以上なら1.5点、8501-11000なら0.5点、8500以下なら0点
⑥リンパ球数(%):0-11.9なら2.5点、12-19.9なら1.0点、20以上なら0点
⇒①~⑥の合計:
 9点以上:余命は21日以下の可能性が高い
 5.5点以下:余命は30日以上の可能性が高い

cf)Karnofsky Performance Scale
100:正常、臨床症状なし
90:軽い臨床症状はあるが、正常活動が可能
80:かなり臨床症状はあるが、努力して正常の活動が可能
70:自分自身の世話はできるが、正常の活動、労働は不可能
60:自分に必要なことはできるが、時々介助が必要
50:病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
40:動けず、適切な医療および看護が必要
30:全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない
20:非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10:死期が切迫している

<PPI(Palliative Prognostic Index)>
①Palliative Performance Scale:10~20なら4.0点、30~50なら2.5点、60以上なら0点
②経口摂取量:数口以下なら2.5点、減少しているが数口よりは多いなら1.0点、正常なら0点
(消化管閉塞のため高カロリー輸液を施行している場合は0点とする)
③浮腫:ありなら1.0点、なしなら0点
④安静時呼吸困難:ありなら3.5点、なしなら0点
⑤せん妄:あり(原因が薬物単独のものは含めない)なら4.0点、なしなら0点
⇒①~⑤の合計点:
 6.5点以上:予後は21日以下の可能性が高い
 3.5点以下:予後は42日以上の可能性が高い

cf)PPS(Palliative Performance Scale)
左から順番にみて、患者に最もあてはまるレベルを決定する。
100%:100%起居している⇒正常の活動が可能で症状なし⇒ADL自立⇒経口摂取正常⇒意識レベル清明
90%:100%起居している⇒正常の活動が可能でいくらかの症状がある⇒ADL自立⇒経口摂取正常⇒意識レベル清明
80%:100%起居している⇒いくらかの症状はあるが努力すれば正常の活動が可能⇒ADL自立⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明
70%:ほとんど起居している⇒何らかの症状があり通常の仕事や業務が困難⇒ADL自立⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明
60%:ほとんど起居している⇒明らかな症状があり趣味や家事を行うことが困難⇒時に介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱
50%:ほとんど座位か横たわっている⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒しばしば介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱
40%:ほとんど臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒ほとんど介助⇒経口摂取正常または低下⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
30%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒経口摂取減少⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
20%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒経口摂取数口以下⇒意識レベル清明または混乱または傾眠
10%:常に臥床⇒著明な症状がありどんな仕事もすることが困難⇒全介助⇒マウスケアのみ⇒意識レベル傾眠または昏睡


2014年9月18日木曜日

胃瘻交換

☆胃瘻交換
・バンパー型ボタンタイプ(カンガルーボタン)の場合
①消毒
②PEGの蓋を開けてオブチュレーターを挿入
③オブチュレーターにガイドワイヤーを挿入
④オブチュレーターを押し込んでバンパー部分を伸展
⑤ガイドワイヤーを残してオブチュレーターとPEGを抜去
⑥新しいPEGにオブチュレーターを挿入しバンパー部分を伸展させ、ガイドワーヤーに沿って挿入
⑦ガイドワイヤーとオブチュレーターを抜去する
⑧airを注入し聴診で確認
⑨ガストロ10ml(便秘なら15ml)を注入し体を少し揺さぶってレントゲンで確認する
・バルーン型チューブタイプの場合
①新しいPEGチューブに蒸留水を注入しバルーンがどれだけの量で膨らむかを確認する
②消毒
③バルーン内の蒸留水を引き抜く
④PEGチューブを引き抜く
⑤新しいPEGチューブにキシロカインゼリーを塗り、瘻孔に沿って挿入する
⑥蒸留水を注入し固定
⑦airを注入し聴診で確認
⑧ガストロ10ml(便秘なら15ml)を注入し体を少し揺さぶってレントゲンで確認する
注意)療養病院でのCV入った胃ろう患者の胃ろう交換はあまりしなくてもよい。

2014年9月17日水曜日

内視鏡の肉眼分類

☆内視鏡の肉眼分類
・逆流性食道炎
 GradeA:5mmを超えない発赤
 GradeB:5mm以上の発赤が1箇所以上
 GradeC:複数の粘膜襞を超えて発赤、全周の3/4を超えない
 GradeD:全周の3/4を超える発赤

・静脈瘤
 L(場所):Ls:上部、Lm:中部、Li:下部、Lg-c:噴門輪に近接、Lg-f:噴門輪と離れた胃静脈瘤
 F(形態):F0:静脈瘤なし、F1:直線状、F2:連珠状、F3:結節状
 C(色調):Cw:白色、Cb:青色、血栓化してる時はCw-Th,Cb-Thと記す
 RC(発赤):RC-:発赤なし、RC+:ごく少数、RC++:+と+++の間、RC+++:全周に多数
 粘膜所見:E:びらん、UI:潰瘍、S:瘢痕
 治療対象はF1RC++、F2RC+、F3RC-以上のもの
 cf)肝機能異常認めない場合は単なる静脈拡張の場合あり

・胃潰瘍
 A1:厚い黒色の苔、辺縁の浮腫著名、出血あり
 A2:辺縁浮腫軽減、白色輪、充血輪
 H1:白苔が薄い、ひだの集まりあり
 H2:潰瘍底が盛り上がる、薄い白苔
 S1:赤色瘢痕
 S2:白色瘢痕

・胃癌
 0型:m癌
 1型:腫瘤型
 2型:潰瘍限局
 3型:潰瘍浸潤
 4型:びまん浸潤
 5型:分類不能

・早期胃癌(m癌、0型胃癌)の分類
 0I:隆起型(正常粘膜の高さの2倍以上、2倍以下は0IIa)
 0IIa:表面隆起
 0IIb:表面平坦
 0IIc:表面陥凹

・胃ポリープ
 山田I型:隆起の起始部が滑らかで明確な境界線なし
 山田II型:隆起の起始部が明確だがくびれなし
 山田III型:隆起の起始部にくびれあるが茎なし
 山田IV型:茎のあるもの

・大腸ポリープ
 Ip:茎あり
 Isp:隆起の起始部にくびれあるが茎なし
 Is:隆起の起始部が明確だがくびれなし
 IIa:隆起の起始部が滑らかで明確な境界線なし
 IIb:平坦なもの
 IIc:陥凹なもの
 LST:小さなポリープが塊になり側方に発育している
 LST-G:従来のポリープがいくつも集まっている
 LST-NG:平坦な病変が集まっている

・胃のNBI
 SEC(粘膜上皮直下毛細血管):癌化すると蛇行、間延び、ループ、口径不同
 MCE(腺窩辺縁上皮):癌化するとギザギザ、口径不同、消失

・大腸のpit pattern
 I:円形
 II:星状、乳頭状→過形成性ポリープ
 IIIs:正常より大きな円形→管状腺腫
 IIIL:正常より大きな円形、管状→腺腫、m癌
 IV:脳回状→管状絨毛腺腫
 VI:不整なpit→m癌、sm微小浸潤癌
 VN:無構造→sm浸潤癌

健診で尿潜血陽性が出た場合


☆健診で尿潜血陽性が出た場合
・±なら経過観察。
・1+以上なら再検し、陰性もしくは沈査で赤血球5個/HPF以下なら経過観察。
・再検にて1+以上もしくは沈査で赤血球5個/HPFの場合:
 ①尿蛋白陽性やeGFR低下認めるときは腎臓内科紹介
 ②①以外で尿路上皮癌のリスクある場合は泌尿器科紹介
 ③①②以外なら腎臓超音波検査と尿細胞診を施行し所見なしなら経過観察。所見あれば泌尿器科紹介。
cf)
・検診は特定の病気を発見する目的で行うもの。例)子宮がん検診など
・健診で偶然発見された血尿をチャンス血尿という。
・血尿とは尿中赤血球20個/μL以上、尿沈渣で赤血球5個/HPF以上を指す。これは試験紙法で1+にあたる。
・試験紙法での±は尿中赤血球10個/μLを指す。
注)尿路上皮癌のリスクファクター:40歳以上の男性 / 喫煙歴 / 化学薬品暴露 / 肉眼的血尿 / 泌尿器科系疾患 / 排尿刺激症状 / 尿路感染の既往 / 鎮痛剤(フェナセチン)多用 / 骨盤放射線照射既歴 / シクロホスファミド治療歴
注意)健診ですることは、①目の結膜を見る、②首のリンパ節を蝕知する、③聴診する(女性の場合は服の上からでも可。胃透視の人はベッドに横になってもらって腹部診察する。)

PEG患者の嘔吐

☆PEG患者の嘔吐
・PEGの開放とウロバッグへの接続
・PEG注入の中止
・点滴追加(腎不全や心不全ないかチェック、DMあるようならインスリンスケール指示)
・腹単オーダー
・黒色嘔吐ならPPI追加(オメプラール20mg1瓶+生食20mlでショットで1日2回、ルートフラッシュ用の生食シリンジ20ml)
・血圧低下や頻脈あるなら貧血もチェックを
・状態みて5日くらい抗生剤投与する
注意)PEGからの排液が500ml程度になれば一旦、5%ブドウ糖500mlや生食、3号液などで補正すること!!

脂肪肝

・肝機能異常伴う脂肪肝あれば、HBs抗原、HCV抗体、自己抗体、飲酒歴を調べ、どれも陰性ならNAFLD。
cf)L/S比(肝臓/脾臓のCT値)が1.1以上なら脂肪肝はない。
・食生活の改善(カロリー制限、糖質制限、肉類/SFA/ω-6PUFAの制限、魚類/ω-3PUFAの摂取)、有酸素運動による減量を指示する。
cf)
・SFA:飽和脂肪酸。動物性脂肪。体内で合成できる。肉、チーズ、パーム油に多い。
・TFA:トランス脂肪酸。常温で固形化する油脂の製造過程で生じる副産物。パン、菓子類、揚げ物に多い。
・不飽和脂肪酸:植物性脂肪。ω3とω6は体内で合成できない必須脂肪酸。
・ω-3PUFA:ω-3多価不飽和脂肪酸(αリノレン酸)。えごま油、アマニ油に多い。
・ω-6PUFA:ω-6多価不飽和脂肪酸(リノール酸)。ごま油、ひまわり油、コーン油、ナッツ類に多い。
・ω-9PUFA:ω-9多価不飽和脂肪酸(オレイン酸酸)。オリーブ油に多い。
cf)ω3:ω6=1:4が理想だが、1:10~50が実情。ω6は過剰摂取も摂取不足もACSのリスクになる。

・NAFLDのうち、NASHであれば癌化の原因。ただし、NASHの診断はあくまで生検。
・NASHが疑わしいのは、DMや高血圧を伴っている場合、BMI30以上の肥満、NASHスコア2点以上、AST/ALT0.8以上や血小板20万未満の肝線維化を疑う場合。肝臓専門医へ紹介する。
・Fib4index=(年齢×AST)÷(血小板×√ALT)
陰性的中率はほぼ100%、陽性的中率は50%
Cut-off値(1.45)未満はまずNASHではない(肝生検は勧めなくてOK)
Cut-off値(1.45)以上ならM2BPGi測定、フィブロスキャンやMRエラストグラフィを施行し肝生検必要か判断する(1.45超えていれば肝臓内科紹介でよいと思う)
NASHスコア:フェリチン上昇(女200、男300ng/ml以上で1点)、空腹時インスリン上昇(10μU/ml以上で1点)、Ⅳ型コラーゲン7S上昇(5μg/ml以上で2点)の合計4点なら9割、2点でも5割がNASH。
・NASHに治療効果があるのは、チアゾリジン誘導体、ビグアナイド、スタチン、ビタミンE、ペントキシフィリン(発がん抑制があるのはビグアナイドのみ)

経口投与抗生剤のバイオアベイラビリティ

☆経口投与抗生剤のバイオアベイラビリティ:
フラジール:100%
クラビット、バクタ:99%
ケフレックス、ケフラール、ダラシン:90%
オーグメンチン、サワシリン:80%
オラセフ:50%
フロモックス、ジスロマック:35%
セフゾン:25%
メイアクト:15%

調理師の便培養陽性

☆調理師の便培養でコレラ、腸チフス、パラチフス、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌(EHEC)が出た場合は就業再開は無症状であっても便培養陰性であることが必要。
☆無症状な場合は抗菌薬は絶対必要ではないが、ニューキノロン、ホスホマイシン、アンピシリンの7日間投与を行い、投与終了後2日以降の便培養で陰性が確認できれば良い。
☆下痢など症状がある場合は治癒後に1日以上の間隔をあけて2回便培養陰性であることが必要。
☆他の菌の無症状性保菌者の場合は便培養陰性にならなくても手洗いを厳重にすることを前提に就業再開が可能。 

輸入感染症

☆輸入感染症
・マラリア、デング熱、腸チフス、パラチフスを考える。
・潜伏期はデング熱は10日以内、腸チフスやパラチフスは11~21日、マラリアは30日以上。
・デング熱はウィルス感染なのでWBCは正常か低下、分画は変わらず、Pltは減少することもあり。
・マラリアは3日連続のギムザ染色で調べること。

内視鏡時の抗凝固薬、抗血小板薬の取り扱い

☆基本は処方した主治医に中止の場合の危険性やどうすればよいかを聞いておくこと。

内視鏡時の抗凝固薬、抗血小板薬の取り扱い(2014年)
注意)単剤の場合のみ記載
注意)観察だけであれば当然休薬は不要
☆血栓塞栓危険度群に生検/出血危険度内視鏡をする場合:
・抗凝固薬、抗血小板薬の休薬の必要なし

☆血栓塞栓危険度群に出血危険度内視鏡をする場合:
・ワーファリンは5日間休薬しヘパリン置換
・プラザキサは2日間休薬しヘパリン置換
・エリキュースは2日間休薬しヘパリン置換
・イグザレルトは1日間休薬しヘパリン置換
・リクシアナは1日間休薬しヘパリン置換
・バイアスピリン/アスピリン/バファリン/タケルダは休薬なし
・プラビックス/パナルジンはプレタールに5-7日間置換し1日休薬する
・エパデール/ロトリガ/プレタール/ペルサンチン/アンギナール/ドルナー/オパルモン/プロレナールは1日休薬
cf)脳梗塞慢性期(心原性以外)
・プラビックス75mg/1x(50kg未満、75歳以上は50mg/1x):副作用は肝障害、顆粒球減少、ITP
・パナルジン100mg2T/2x:副作用はプラビックスと同じだが頻度は高い
・プレタール100mg2T/2x朝夕:副作用は頭痛、頻脈

☆血栓塞栓危険度群に生検/出血危険度内視鏡をする場合:
・バイアスピリン/アスピリン/バファリン/タケルダは3-5日間休薬
・プラビックス/パナルジンは5-7日休薬
・エパデール/ロトリガ/プレタール/ペルサンチン/アンギナール/ドルナー/オパルモン/プロレナールは休薬なし

☆血栓塞栓危険度群に出血危険度内視鏡をする場合:
・バイアスピリン/アスピリン/バファリン/タケルダは3-5日間休薬
・プラビックス/パナルジンは5-7日休薬
・エパデール/ロトリガ/プレタール/ペルサンチン/アンギナール/ドルナー/オパルモン/プロレナールは1日休薬

cf)
・血栓塞栓危険度群:心原性脳塞栓症の既往、心房細動、機械弁、人工弁、抗リン脂質抗体、DVT/PE、PCIステント留置2か月後まで、薬剤溶出性ステント12か月後まで、CEA後2か月、脳主幹動脈50%以上の狭窄、最近発症したTIA/CI、Fontaine分類3度以上のASO
・出血危険度内視鏡:バルーン内視鏡、クリップ、高周波、点墨、消化管ステント、乳頭バルーン拡張術
・出血危険度内視鏡:ポリペク、ESD、EMR、乳頭切開術(EST)、EUS穿刺、PEG増設、静脈瘤治療、粘膜焼灼術(APC)

注)抗血小板剤(5-7日休薬が必要なもの)や抗凝固薬を使用していて、血便がありCFをした場合、ポリープから出血がある場合は、2-3日おいて血便の持続がないのを確認してから、ヘパリン置換やプレタールに置換開始し、1週間後にポリペクを。

☆ポリペク後の抗血小板薬の再開時期
・ポリペク後、2日間あけて再開する。
・脳梗塞のリスクが高い場合は1日に短縮する。
・出血のリスクが高い場合は3日に延長する。

インスピロンの設定について

☆インスピロンの濃度は35,40,50,70,100%で流量は最大15L/分まで。
・「35%8L/分」は、「酸素濃度が35%になるように100%酸素を8L/分で流す」という意味。
・空気中の酸素濃度は20%なので、20%酸素◻L/分と100%酸素8L/分で35%酸素を作る意味で、◻は計算すると34.6L/分。つまり、34.6+8=42.6L/分の流量が出てくる。吸気と呼気の時間は1:2なので、吸気量は42.6/3=14.2L/分、呼吸数を20回/分とすると、14.2L/20=710ml/回となる。
・しかし、1回換気量が710ml以上だと不足分として外気を取り込むため、気道に入る酸素濃度(FiO2)はさらに下がることになる。
・35%8L/分を50%8L/分にするのと、35%10L/分にする場合の違いは?
 呼吸数が20回/分とすると、50%8L/分にすると、計算すると1回換気量が400ml以下なら50%8L/分でFiO2は50%になる。35%10L/分にすると1回換気量が1200ml以下ならFiO2が35%になる。つまり1回換気量が710ml以上1200ml以下なら35%10L/分に変更することが有効。
・リザーバーバッグがついてるときは、吸気時にバッグがへこんでないなら機能していない。マスクの隙間から外気を取り込んでいる。リザーバーバッグを有効にするにはマスクを顔面に密着させる必要がある(リザーバーマスクが有効なら呼気時に溜まった酸素を吸えるから1回換気量が酸素流量を上回ってもFiO2が下がることはない)。

胃炎の京都分類

☆胃炎の京都分類
・ピロリ未感染の所見:光沢のある水々しい粘膜、RAC(集合細静脈)、稜線状発赤
・ピロリ現感染の所見:点状発赤、体上部大弯や 胃穹窿部大弯のびまん性発赤(好中球浸潤による充血)、RAC消失、血管透見(萎縮性胃炎)、鳥肌、白濁粘液、腸上皮化生(ピロリは住めない)、体部大弯の巨大すう壁胃炎(十分送気しても7mm以上の幅のひだ)。
  cf) 萎縮性胃炎と腸上皮化生は分化型胃癌、鳥肌胃炎や巨大すう壁胃炎は未分化型胃癌の発生母地になるため速やかに除菌を。
・黄色腫:現感染と既感染の所見
・ピロリ既感染の所見:除菌後や高度な萎縮でピロリが住めない場合で除菌すると点状発赤やびまん性発赤は速やかに消えて光沢やつやは戻るが高度な萎縮は残り、地図状発赤や斑状発赤が生じ、Ⅱc病変と紛らわしい。除菌により腸上皮化生は少しずつ減っていく。体部の敷石状粘膜(もこもこ胃炎)や穹窿部から体上部の多発白色扁平隆起はPPIによる高ガストリン血症によるもの。
・除菌しても男性で体部に萎縮が残っている場合は5年(最長10年)は除菌してもGFフォローが必要。
・A型胃炎(自己免疫性胃炎)は前庭部は水々しいが体部がopen typeの萎縮(通常のピロリ感染胃炎と逆)で、検査はピロリ抗体陰性、ガストリン著増、抗内因子抗体陽性、抗壁細胞抗体陽性。

ウィルス性肝炎の治療

☆C型肝炎
・非代償性肝硬変は抗ウイルス薬適応なし。
・肝炎はALT30以上、Plt15万未満で治療適応。
・IFN使えるなら第二世代プロテアーゼ阻害剤のシメプレビル(SMV)+Peg-IFN+リバビリン(RBV)が第1選択。
・副作用でIFNが使えない時はDAA(direct acting antiviral)のダクラタスビル(DCV)+アスナプレビル(ASV)だが、Y93,L31変異ではSVR率は40%であることやDAAによるSVRがHCC予防になるかどうかのevidenceもないため、65歳未満かつF1以下の繊維化ではIFN使えない場合は治療待機もあり。

☆B型肝炎
・非代償性肝硬変でも治療適応あり。
・肝炎でALT31以上かつHBVDNA 4.0 log copies/ml以上の慢性肝炎ではPeg-IFNを第1選択、IFNは免疫賦活作用あるため黄疸伴う急性増悪では核酸アナログのエンテカビル(ETV)やテノホビル(TDF)を使う。
・HBVDNA4.0以上の肝硬変(代償性、非代償性とも)には核酸アナログが第1選択。
・母子感染の9割がe抗原消失し、e抗体陽性になり(HBeセロコンバージョン)、非活動性キャリアになるが、1割は慢性化し年2%で肝硬変になる。

間質性肺炎の分類と治療

☆間質性肺炎の分類
・薬剤性
・膠原病
・IIPs(特発性間質性肺炎):IPF,NSIP,COP
  IPF(特発性肺線維症):慢性経過、治療はNAC(Nアセチルシステイン)と管理が中心(急性増悪時はPSL+ISかPSL隔日)
     管理:慢性呼吸不全(HOT・労作時の酸素化を改善するため労作時にあらかじめ酸素流量増量する、流量決定は入院時にする)、急性増悪(呼吸困難 and HRCTで新たに生じたすりガラス陰影 and PaO2 10mmHg低下/CRP,LDH,KL-6,SP-A,SP-Dの上昇、PEや心不全、気胸/縦隔機種の除外を)、肺がん、禁煙指導、ワクチン接種、GERDのチェック
  NSIP(非特異性間質性肺炎):亜急性経過、治療はPSLもしくはPSL+IS
  COP:急性経過、治療はPSL

☆IIPsの治療
①PSL:プレドニン0.5-1mg/kg/day→2-4週毎に5㎎減少→1か月毎に効果判定→プレドニン投与で改善ないときはISを加える
②IS:免疫抑制剤 アザチオプリン2-3mg/kg/day or シクロホスファミド1-2mg/kg/day or シクロスポリン2㎎/kg/day
③PSL隔日:PSL20㎎隔日
COP、cellularNSIPならPSL、fibroticNSIP、IPF急性増悪ならPSL+ISもしくはPSL隔日が基本

☆PSL,IS投与時の感染対策
・Pneumocystis jirovecii予防:バクタ1錠/日または2錠隔日→PC肺炎か急性増悪かは画像では難しい
・CMV抗原を普段からcontrolとして測定しておく
・アスペルギルス:菌球病変はLKとの鑑別が必要、アスペルギルス抗原/抗体やβDグルカンをcontrolで測定しておく 
・結核感染が疑われる場合、既往がある場合:INH300mg/日(PSL10㎎1か月以上使用時)

ポリペク後の抗血小板薬の再開時期

☆ポリペク後の抗血小板薬の再開時期
・ポリペク後、2日間あけて再開する。
・脳梗塞のリスクが高い場合は1日に短縮する。
・出血のリスクが高い場合は3日に延長する。

結核の診断と結核が見つかった時の対応

☆結核の診断:
・結核の診断は臨床症状、画像、抗酸菌検査、血清学的補助診断から総合的に判断する。塗末陰性でも培養やPCRが陽性になる場合がある。塗末陰性とは排菌が0ではない、少ないだけで見つかってないか、痰の状態が良くないだけかもしれない。3連痰でも画像が怪しい場合は胃管採取や気管支鏡採取をすること。
☆診断の手順
結核を疑ったら、
①胸部レントゲン
②血液検査(ESR,CRP,WBC,IgM/IgG/IgA,ADA)
→①、②で異常あれば③へ
③QFT-2G
→0.35IU/ml以上なら陽性と判断し、0.1-0.35IU/mlなら他の検査を総合して④へ進むか判断する。陽性なら④へ
④胸部CT
→異常あれば⑤へ、①~④で異常なくても2か月後に①、②、③を施行する
⑤喀痰(無理な場合は朝1番の胃液)、培養を連続3日間提出、PCRは1回提出する
☆結核が見つかった時:
・PCRの結果が出たらすぐに保健所に結核発生届をFAXすること。
・状態が悪い場合に、救急車を使う場合は、救急隊にN95マスクを装着するよう伝える。
・施設からの入院の場合は、施設に結核のことを伝えること。
cf)非定型抗酸菌症(NTM)の場合は空気感染しないので、患者と周囲の人にマスクは必要ない。
cf)結核発生届の書き方
 ・感染したと推定される年月日は「不明」
 ・感染蔓延防止のために医師が必要と認める事項は「当該患者の隔離、結核治療と医療従事者を含む接触者の感染精査」
☆結核接触者(自覚症状なし)に対する対応
注意)基本は保健所の結核審査会からの指示に従うこと。
①初発患者が判明した時点でQFT施行し陽性なら胸部XPや胸部CT施行する。
②初回QFTが陰性でもwindow periodを考慮し、2-3ヶ月後に再度検査する。
③QFT陽性で胸部CTにて現感染疑われるなら呼吸器内科紹介。
④QFT陽性だが胸部CTで異常なければ医療者であれば潜在性結核と考えてINH単剤6ヶ月内服を行うか、3ヶ月ごとの胸部XPフォローを行う。過去2年間に結核患者との接触の可能性が低いのであれば、既往感染と考えて年1回の胸部XPフォローを行う。
cf1)潜在結核でINH単剤投与を行うと耐性菌が出現するという意見もある。
cf2)初発患者の喀痰培養でINH耐性の場合はRFP単剤6ヶ月内服を行う。
cf3)IGRA(イグラ)にはQFTやT-spotがあり現感染と既感染は区別できない。入職時のQFT陰性が陽転したのであれば現感染であり、CTで異常影ない場合はINH単剤6ヶ月投与する。

CFのフォローアップ期間

☆CFのフォローアップ期間
・adenoma(低~中等度異型)があった場合:
 ポリペクできた場合は2~3年後、ポリペクしなかった場合は1年後にCF。
・adenoma(低~中等度異型)が複数個(4-5個以上)あった場合:
 ポリペクした場合でも1年後にCF(他にもあるかもしれない)。
・cancer in adenomaの場合:
 半年後に再度CF(断端陰性でも)。
cf)腺腫であっても高度異型なら半年後フォローが良い。
・異常所見なしの場合:
 便潜血でフォロー。
注意)adenomaあれば断端はあまり気にしなくても良い。気になるなら3ヵ月後にフォローを。断端不明瞭なら通常のフォローアップ期間でよい。

イレウス管留置方法

☆イレウス管留置方法
①イレウス管のバルーンが蒸留水何mlで最大に拡張するかを事前に確認(多くは15ml)。
②経鼻的に内視鏡を挿入し、胃に挿入後、体のみ正面になるようにして透視下に確認する。胃液や空気を極力吸引することで苦痛を緩和し、かつ後のチューブ挿入を容易にする。
③十二指腸下行部まで内視鏡を挿入してから、鉗子チャンネルを通してガイドワイヤーを挿入する。
④透視下にて十二指腸下行脚までガイドワイヤーを進める。慎重かつ愛護的に操作しながらできる限り深部に挿入するが、可能であればトライツ靱帯部(十二指腸空腸曲)を越えて深部に進めておく。
⑤鉗子チャンネルからガイドワイヤーを送りつつ、透視下にガイドワイヤーの位置を確認しながら内視鏡のみ抜去する。抜去の際に鼻からガイドワイヤーが出るところを助手Aに把持してもらう。
⑥イレウス管全長をガイドワイヤーにかぶせて挿入する。イレウス管からガイドワイヤーが出たところ助手Bに把持してもらい、透視下にガイドワイヤーの位置が変わらないようにイレウス管を進める。
⑦ガイドワイヤーを少し進め、イレウス管を進めることを繰り返しながらできるだけ肛門側に進める。
⑧留置バルーンに蒸留水を入れ、ガイドワイヤーを抜去し、イレウス管を透視下で胃内でたるませてから、鼻で固定し排液バッグに固定する。
⑨ガストロを注入し透視下に観察する。バルーンから蒸留水を抜かなければ、ガストロが肛門側に入っていかない点に注意する。

Cushing症候群の診断

<Cushing症候群の診断>
☆真夜中の12時にデカドロン0.5mg2錠を服用し、朝一番のコルチゾールを測定し、5以下なら正常となる(同時にACTHも測定すればよい)

CTの読み方

<CTの読み方>
冠状断(coronal):体を腹側と背側に分ける面
矢状断(sagital):体を左右に分ける面
水平断(transverse)

☆HFU(CT値)
・30以下なら水(尿や腹水)
・30以上なら血液
・50以上なら凝結塊

☆double phase
・30秒後、Aoや腎皮質が造影→早期相(early phase)
・2分後、Aoや腎実質が造影→晩期相(delayed phase)

☆血腫
・均一
・densityが高い→筋肉より高いdensity(腫瘍と血腫は筋肉より高い)
・HFU30以上
・泡沫状のairなし
・造影でhighかつdouble phaseで形の変化あれば現在の出血(etravasation)
・血腫の中に沈まないhighあれば現在の出血(etravasation)
・臓器外にある血腫

☆大動脈解離(切迫破裂、進行性)
・造影でhigh(単純でもdensity高め)→陳旧性ではisoからlow
・造影でcrescent sign→造影でlowでも新鮮
・造影でintimal flap(真腔と偽腔の境目)
胸部大動脈解離(単純でもintimal flapの石灰化が見える)


大動脈解離がSMAに及んでいる


血栓閉塞型の大動脈解離


☆動脈瘤
・正常大動脈の1.5倍以上(正常部位と比較する)
・造影で真ん丸なetravasation
・大血管からの出血→胸部は解離の破裂、腹部は腹部大動脈瘤(AAA)破裂が多い

☆肺結核
・右上葉に空洞を伴う小結節、小結節の周囲に娘結節、気管支拡張、縦隔条件で石灰化があれば疑うこと

☆肺陰影
・肺胞腔が完全に液体で満たされたとき→斑状陰影、air bronchogram
・「肺胞腔が不完全に液体で満たされairを含むとき」や「肺胞壁の肥厚」→スリガラス陰影
・肺の構造とは無関係な陰影→浸潤陰影

☆肺炎の新旧の区別
・新しい肺炎は呼吸細気管支が炎症で白く写るので、約10mm程度の線状の陰影が見える。

☆心タンポナーデ
・左半分のほとんどを心臓が占める
・心嚢液(心臓を取り囲むようにdensityの低い液貯留)とIVCの拡張(Aoよりも大きい)がサイン

☆後腹膜血腫
・脊椎の横にややdensityが高いmass
・腎臓が上に持ち上がっている

☆消化管出血
・糞便があればそれ以降の部位からの出血

☆大腸か小腸か(追っていくしかない!!)
・Kerckring襞(小腸襞)は腸管を完全に横切る
・Haustra(結腸ひも)は腸管を完全には横切らない
●上行結腸につながっていれば小腸
●下行結腸につながっていれば横行結腸
(つながりを見るときはパラパラ見ずに1枚ずつゆっくり見ること!!)
・「丸がいっぱい」「丸につながる扇状の腸間膜」「液状物だけでガスなし」は小腸
・「ガスが多い拡張腸管」は横行結腸

☆空腸か回腸か
・右上から左下に線を引き、上が回腸、下が空腸

☆大腸の閉塞か小腸の閉塞か
・小腸は拡張しても5㎝まで、それ以上は大腸の拡張
・上行結腸の拡張もしくは大量の糞便→横行結腸以降の閉塞
・上行と下行の拡張→S状結腸の閉塞

☆腸閉塞
・小腸だけの液状物→小腸の機械的腸閉塞
→①外ヘルニア(大腿静脈が圧迫されていれば大腿ヘルニア、恥骨と坐骨が見える高さで恥骨筋(前)と外閉鎖筋(後)に挟まれた腸管あれ
ば閉鎖孔ヘルニア)
 ②beak signまたは壁造影の薄い濃いがあればclosed loop
 ③回腸末端から上行結腸にかけてpseudokidney signあれば腸重積
・小腸だけでなく盲腸や上行結腸にも液状物(niveau)→麻痺性イレウス→腸管穿孔(若年者なら穿孔性虫垂炎)
・大腸の閉塞は盲腸が12cm以上なら穿孔の可能性
→圧上昇でBauhin弁が壊れると小腸が拡張
→圧が逃げられるので待機的に見れる(ただし右下腹部痛は強いはず)
cf)腸炎や虫垂穿孔による麻痺性イレウスでも小腸~上行結腸の拡張が見られるが、腹痛は軽度のはず。
・小腸ガスはそれだけで異常。機械的腸閉塞、急性腸炎、虫垂炎、腸炎、Mesenteric ischemia、腸管穿孔を考える。
横行結腸癌


☆小腸閉塞あれば外ヘルニアを探す
・恥骨筋と外閉鎖孔に挟まれた腸管を探す
・小腸内糞便はより遠位で閉塞起点があるサイン
・蠕動で連続した腸管でも狭窄してるように見えたり、そこから突然拡張してっ見えることがある。中に液体が溜まっていなければ腸閉塞ではなく、蠕動を見ていることが多い。dynamicで見ると閉塞部位が移動しているはず。

☆NOMI(non-occlusive mesenteric ischemia)
・脱水や出血による腸管虚血壊死

☆腸管壁肥厚
・腸炎は単純で全周性の均一な壁肥厚(4㎜以上)→発熱ありなら感染症腸炎、発熱なしなら虚血性腸炎
・感染性腸炎ではアニサキスや魚骨によるものを忘れないこと。
・辺縁不整で内腔を閉塞する造影効果のある粘膜肥厚は癌を疑う
・内腔を閉塞しない小腸の壁肥厚は悪性リンパ腫か
・何か他に炎症源(虫垂炎やアニサキス腸炎やFHCなど)があって麻痺性イレウスになっている場合は、小腸壁の肥厚は軽くて、拡張だけしている
・感染性小腸炎の場合は、壁の肥厚が強く、内側の粘膜と外側の外膜両方が線状に強く染まり、間の粘膜はそれらよりやや薄いが造影され、周囲の炎症も強い。
・腸炎と思ったらSMV塞栓症を否定する。SMAの右隣がSMVで脾静脈と合流して門脈となる(脾静脈が合流し、SMAの隣にある血管を探す)
腸炎


☆SMA塞栓症
・SMAを追っていくと血栓による狭窄あり
・右半結腸の壁造影効果が少ない
・虚血状態の右半結腸が拡張している
SMA塞栓症での門脈内ガス、腹腔内air


★絞扼性腸閉塞のサイン
・小腸がgaslessで拡張
・腹水(∵腸管浮腫により静脈が圧迫される)
・closed loopのtriasはgassless、腹水、腸管膜の造影

★腸管壊死のサイン(血栓症か絞扼性)
・earlyでもdelayでも壁の造影効果が弱い→delayで造影されてくれば浮腫か虚血
注)他の腸管は壁が造影されて追えるのに、全体的にほんのり明るくなってるだけで壁が追えない
・壁内にガス(壁に沿って丸いつぶつぶがつながったような像,air-fluid levelもあり)
・肝臓辺縁のガス(門脈によって辺縁に押しやられる、辺縁から2cm以内のガスは胆道内でなく門脈内ガス)
・線状陰影(腸間膜の濃度上昇)→腸間膜の炎症
・ウィンドウレベル/幅をL60W60にして他の腸管との差を見る

★腸管穿孔のサイン
・腹水(ベタッとして均一で形が三日月ぽい)→空気泡多いなら腸管外糞便か
・骨盤内液貯留
・肝周囲のfree air(辺縁がはっきりとした真っ黒、辺縁がぼんやりしてるものは脂肪組織の可能性)
・脊椎/Ao/腎臓付近のfree air→十二指腸(腎周囲のfree air)かS状結腸(腎より下のAo付近のfree air)の穿孔(∵後腹膜)
・IVC虚脱(脱水→循環血漿量↓)
・free airあれば板状硬なくても汎発性腹膜炎と考える(CRP↑+free airで板状硬なければより重篤な腹膜炎と思われる)。 
・腹部診察で押さえて一番痛がる部位と腸管周囲ガスが多い部分が一致すればそこが穿孔部位である可能性が高い。
S状結腸穿孔



☆膿瘍
・壁が肥厚し、内部が不均一、上下に追っても盲端になる

☆直腸潰瘍
・直腸出血+他の結腸に憩室なし→大量出血するけど冷静に!E入りネオガーゼを詰めよう!

☆憩室
・造影でも単純でもlow
・highな丸い陰影があれば憩室出血か糞石→出血ならdouble phaseで変化あるはず
・圧痛+憩室+腸管粘膜の肥厚+周囲の炎症像→憩室炎(憩室なければ虚血性腸炎か感染性腸炎か)

☆急性虫垂炎
・外径6㎜以上、壁がよく造影、周囲の脂肪濃度上昇や液貯留
・壁造影のみならカタル性で抗生剤で軽快する
・糞石あれば手術適応(抗菌薬だけでは無理)
・虫垂は水平断では細長く尻尾様か筒状かに写る
・Uターンしているものもある
●盲腸は水平断では丸い→丸くないところは回腸か虫垂の起始部である!!
・盲腸を下まで追っていって急に小さな丸になれば虫垂の起始部
・盲腸の近くに小さな石灰化があれば糞石の可能性がある。pCTでもよく見れば糞石を取り囲むように虫垂が見えるはず。
・盲腸との接続が確認できなくても、小腸が盲端になっていれば虫垂のはず。

☆腸重積
・内側の腸管と外側の腸管の間に血管があることが腸重積の証拠
・血便や腹膜炎あれば穿孔や壊死の可能性→CFよりも緊急手術

☆腸管拡張
・大腸は8㎝以上
・小腸は5㎝以上

☆急性胆嚢炎
・短軸5㎝以上、かつ壁の肥厚(4mm以上)、周囲脂肪織の炎症像
急性胆嚢炎(胆石が頚部に嵌頓している)


☆総胆管拡張
・正常総胆管は7-11㎜
・胆摘後やEST後は総胆管拡張するので注意


☆腎盂腎炎
・くさび型のlow density
・腸腰筋筋膜(腎が見えるレベルで椎体に付着している筋)が肥厚→腎周囲の炎症

☆気腫性膀胱炎
・膀胱壁内にガス→膀胱内の大量のガスは膀胱直腸瘻の可能性あり(直腸癌か)
・尿のniveau
・膀胱壁に沿ったガス多数

☆肝膿瘍
・1個の時は大腸の炎症(全周性の壁肥厚)を探す

☆肝血管腫
・動脈相での辺縁部もしくは結節全体の大動脈と同じ明るさの早期濃染
 cf)HCCなど悪性腫瘍では96%が早期濃染しても大動脈より暗い
・門脈相~平衡相での高吸収~等吸収、中心への濃染の広がり
 cf)一部造影されない部位があっても一度造影された部位が低吸収になることはない。
 cf)HCCでは7割が門脈相~平衡相で低吸収になる。
注意)dynamicCTでの時相
・早期動脈相:Aoおよびその主分枝のみ造影。門脈のenhanceはあってもごくわずか。
・後期動脈相:古典的HCCが最も造影される。門脈もenhanceされてきている。
・門脈相:肝実質が最も造影される。
・平衡相:血管と肝実質が等しい濃度。HCCではwash outがある相。HCCでは被膜濃染を認めることがある。
血管腫(単純→動脈相→門脈相→平衡相)


☆特発性食道破裂
・左側胸水+縦隔内気腫

☆急性膵炎
・①膵臓腫大、②上腹部痛、③アミラーゼ上昇のうち2項目陽性なら急性膵炎
・膵頭部で椎体の横径以上、体尾部で椎体の横径の2/3以上を腫大とする
・膵臓周囲の毛羽立ち、液貯留
・膵実質の不均一化
・片側腎上極の腹水→後腹膜の炎症のサイン

☆慢性膵炎
・①石灰化(US,CT)、②主膵管または副膵管の分断や拡張(頭部で5㎜、体尾部で3㎜)、③セクレチン試験で2因子以上低下、④病理
→CTではとにかく小さくても石灰化を探す(ほんの小さな石灰化でもOK)

☆凸レンズ型の血腫
・脳なら硬膜外血腫
・肝臓なら被膜下血腫
・手術適応は、増大、壊死、感染
慢性硬膜下血種(古くなると見逃しやすい)


☆腹部外傷
・肝損傷、腎損傷、脾損傷、膵損傷

☆脾梗塞

☆CT読影のチェックポイント
腹水あるか
肝辺縁は鋭か鈍か
肝臓にSOLあるか
総胆管
胆嚢
膵臓に嚢胞あるか、石灰化ないか
腎臓に嚢胞あるか
腎萎縮あるか
水腎はないか
腹部大動脈瘤はあるか
IVC虚脱あるか
前立腺肥大あるか
虫垂の確認
憩室
骨盤内腹水あるか
総腸骨動脈瘤はあるか
ヘルニアはないか
女性なら卵巣嚢腫はないか⇒女性で骨盤内に盲端のabscessに見えるものがあれば、子宮留膿腫や卵巣膿瘍や卵巣嚢腫を考える。

針刺し時の血液検査

<針刺し時・輸血後の血液検査>
☆針刺し
・AST,ALT,HIVAb/Ag,HTLV-1(PA),s抗原,s抗体,HCV抗体
注)CV留置中に針刺しをした場合、針刺しの針を必ず別に捨てること。
cf)針刺しの相手に感染がない場合は1回のみの採血で良いが、感染ある場合は該当感染の有無を1ヵ月毎に3ヶ月、半年後にフォローする。

輸血後
HIV Ag/Ab、HCV抗原、HBVDNA量(リアルタイム)


CFやGFで癌が見つかった時のムンテラ

☆マナーについて
・いきなり本題に入らないこと。体調や最近の様子を聞く。
・本人だけの時は家族と同席が必要ないか聞くこと。
・話の途中でもわからないことがあればいつでも質問するように伝える。
・説明の途中で「ここまでわからないことや不明なところはありますか」と聞くこと。
・「がん」とはっきり言うことは大切だが、必要以上に「がん」を繰り返さないこと(悪いもの、腫瘍、できものという曖昧な言葉にする)。
・セカンドオピニオンについて説明すること。
・今の目標は治療のための検査を進め、治療を始めることであり、治療が始まったら以前の生活と変わりなく過ごせるようにすることだと伝える。
・最後に「何か心配なことはありますか」と聞くこと。

☆病状について
・カメラで見えた隆起性病変は悪性であって、内視鏡的にとることはできない。
・外科手術、開腹手術が必要です。
・腫瘍にはステージ分類があり、分類をしてそれによって治療が変わってくるため、今後はCTをとってステージ分類がⅠからⅣのどこなのかを決める必要がある。
・手術になった場合の合併症その他は外科受診をして、外科の先生からの説明を受けてほしい。

☆ケモや緩和ケアになったとき
・化学療法と緩和ケアは同時進めるものであること。
・緩和ケアの開始が末期を意味しないということ。
・Ⅳ期イコール末期ではないこと。

☆死にたいと言われたとき
・「そういうふうに考えても仕方がないと思います」(決して、そんなこと考えずにがんばりましょうはだめ。)

ステロイドテーパリングの方法

cf)ステロイドテーパリングの方法
・リンデロン8mg×2→リンデロン8mg3日間→リンデロン4mg3日間→終了
・ソルメドロール120mg→プレドニン60mg3日間→プレドニン20mg3日間→終了
注)そもそも1週間程度のステロイド使用ではテーパリングは必要ない。
・プレドニン30mg長期投与例
 25mg1週間→20mg1週間→15mg1週間→10mg1週間→10mg隔日1週間→5mg隔日1週間→終了
・デカドロン1mg(プレドニン6.25mg)の長期投与例
 1mg隔日4週間→0.5mg隔日4週間→0.25mg隔日4週間→終了
cf)ステロイドを分2にするときは日内変動に合わせて朝を多くすること。
☆CMV、結核、カリニ肺炎(PCP)、HBV再燃に注意する。疑う時はCMV-Ag/CMV-IgM/CMV-IgG/CMV-C7HR、3連痰/結核PCR/QFT、βDグルカン/LDHを精査する。下血あればCMV腸炎も忘れずに。
☆プレドニン換算20mgを4週以上継続するときは血糖測定、パリエット10mg1錠朝食後、ボナロン/フォサマック35mg1錠起床時(第2,4週の金曜日)、5%ハリゾン/ファンギゾンシロップ含嗽液(480ml)1本1回20mLでうがい後に服用1日3回、バクタ/ダイフェン(S400mgT80mg)1錠(月水金内服)、胸部レントゲンを週1回、β-Dグルカン、CMV-C7HRを2週間毎に測定する。
注意)ステロイド中止する場合はバクタはプレドニン終了とともに中止してよい。

中心静脈留置カテーテルの入れ方

☆中心静脈留置カテーテルの入れ方
①両脚挙上の上(Trendelenburg体位)、頭位を45度左側外転させ、超音波で内頸静脈と内頚動脈の位置を確認する。
 cf)両下肢挙上しても内頸静脈の虚脱がある場合は頭位を下げるとよい。
②清潔ガウンと清潔手袋を装着し、イソジン綿球で穿刺予定部位、およびその周辺を半径15㎝の範囲で消毒する。
③覆い布をかけ、カテーテルやダイレーターの内部をヘパリン生食で満たし、キューサイトを閉栓する。
④左手で内頚動脈の拍動を触知しつつ、皮膚を1%キシロカイン5mlで浸潤麻酔、すぐ脇を通る内頸静脈を穿刺する。
⑤22G針で数回穿刺し、逆血を確認した後、そのままシリンジだけを抜き、22G針は留置しておく。
⑥留置した22G針の2㎜遠位を同じ角度で留置針を穿刺する。
⑦22G針を穿刺した深さよりも深い部位で留置針を止め、そのまま内筒を引き抜く。
⑧外筒を固定し、留置針のシリンジを接続し、陰圧をかけながら、外筒を固定しつつ、逆血があるまで、徐々に引き抜き、逆血があるところでガイドワイヤーを挿入する。
⑨ガイドワイヤーが残り20cm程度になるまで挿入し、外筒を引き抜いた後、ダイレーターを根元まで挿入し、穿刺部位を広げる。
⑩ダイレーターを引き抜き、そこにヘパリン生食で満たしたダブルルーメンカテーテルをガイドワイヤーに沿って、挿入し、15㎝の深さまで挿入する(急性膵炎の場合はダブルルーメンにすること)
⑪シリンジで逆血を確認した後、ヘパリン生食を流し込み、再びキューサイトでカテーテルを閉栓。
⑫24G針と1-0シルクを使って、3か所でカテーテルを固定して終了する。
⑬胸部X線単純写真を撮影し、上大静脈の位置まで留置されていることを確認し終了する。
cf)鼠径からのCV留置で肥満女性の場合、股関節を外転させた方が入りやすい。
cf)
・右内頚静脈の場合は13cm(12-15cm)、大腿静脈の場合は35cm(30-40cm)で留置する。
・右内頚静脈の場合はCVカテーテルの先端が気管分岐部の高さにくるのが良い。
・右内頚静脈穿刺ではあまり鎖骨に近いと気胸を起こすことがある(留置して数時間後にSpO2低下を起こすこともある)。
・穿刺するときは針を寝かせてする。十分に寝かせないとガイドワイヤーが血管壁に当たって進まないことがある。
・穿刺中に血管走行がわからなくなった場合は、清潔手袋にゼリーを入れて、中にプローベを入れて、清潔手袋ごと生食にひたして血管位置を確認しながら穿刺するとよい。
・CVを固定する時に、ペアンで糸を挟んだ方向と直角な方向に結ばないと、滑って奥に入ってしまう!
・CV穿刺にて逆血もあり、滴下も問題ないのに、じわじわ出血が続く場合は大腿動脈を突き抜けて大腿静脈を穿刺している可能性あり。
cf)CVカテーテル閉塞時の交換について
・皮膚をカテーテルごとイソジン消毒し、覆い布をかける。
・ハサミでカテーテルの途中を切って、清潔操作でガイドワイヤーを挿入し、固定の糸を抜糸してからカテーテルを抜去する。
・その後はCV留置と同様の操作を行う。
注)ペースメーカーある場合、内頚静脈からのCVはやめた方がよい。カテ感染の場合、ペースメーカーのリード線経由で感染が広がる場合あり(どこから留置しても菌血症になるため同じという意見もあり)。

胸腔ドレーンの入れ方

☆胸腔ドレーンの入れ方
⓪必ずルート確保、モニタ装着すること。
①左第5/6肋間をマーキングし、第5肋骨上縁に沿って22Gで局所麻酔をしながら陰圧に保ちつつ穿刺する。
②空気とともに少量の胸水の逆流を認め(気胸の場合は空気のみ)、少し針を戻したところで壁側胸膜を浸潤麻酔する。
③尖刃で約1.5㎝の皮膚切開創を加え、そのままコッヘル鉗子及び第2指で第5肋骨上縁に触れながら、皮下組織および壁側胸膜を剥離していき、第2指が2㎝進んだところで左肺を触知。
④約1㎝の大きさの孔を壁側胸膜にあけ、28Frのチェストチューブを背側下部胸腔に向けて挿入(気胸の場合は14Frで肺尖部でも可)、2㎝挿入したところで内筒を引き抜き、そのままチェストチューブ(トロッカー)を挿入する。
⑤チェストチューブの両端を1-0シルクおよび角針でマットレス縫合し、その2本の糸でチェストチューブを固定する。8つおりガーゼおよびYガーゼで挿入部を多い、がっちりテープで固定。胸部レントゲンで挿入を確認し、合併症がないことを確認し終了。
⑥気胸、胸水の場合は5cmH2Oで持続吸引すればよい。
cf)
・気胸の場合は肺の膨張を確認し、air leakがなくなった翌日の朝にチェストチューブをクランプし、6時間~1日後に胸部レントゲンにて確認し、虚脱がなければトロッカーを抜去する。
・気胸での呼吸性変動/エアリークは+/-ならクランプ可能、+/+なら気胸継続かチューブから漏れてるから接続を確認、-/-ならチューブ閉塞、-/+チューブはずれている。
・吸引圧は-10cmH2Oと言われるが、始めは-1~-5cmH2Oにした方が無難。それでエアリークが続くようであれば吸引圧を上げる。エアリークが全くないようであれば0cmH2Oかwater seal(吸引機の電源をオフ)にする。
・咳あれば再膨張性の肺水腫かも。いきなり上げすぎないこと。
・トロッカー抜去は呼気終末で息止めをしてから行う。
・トロッカー抜去後はマットレス縫合を行うこと。

入院させた後に気をつけること

<入院させた後に気をつけること>
☆ムンテラは厳しめにするが、元気そうな患者の家族にいきなりDNARか聞かないこと。
☆検査値異常を見逃さないために、その日の異常値の項目を全て時系列で見ること。自分がよく知らない項目の見逃しが防げるし、大きく変化している場合は正常範囲でも何か意味がある。
☆CRP正常でも以前よりWBC,Neutro上昇あれば感染の可能性が高い。
☆同じ抗生剤を10日以上続けていないかチェックする。
→CMZ,ワイスタール,セフォチアム,クラビットなどに順次変更していく。
☆CV留置中は発熱の有無を常に確認する。刺入部の発赤とspike様の発熱はカテ感染。
☆inとoutの量に気を配る。特に心不全ある人はすぐに溢水になってしまう。
☆心拡大=溢水ではない。口渇やBUN/Cr、尿比重、Na濃度などで総合的に判断すること。
☆体格小~中等度なら1500ml、大柄なら2000mlで開始し、2-3日の尿量を見て増減することが大切。
☆抗生剤も点滴変更も効果が出るのは2、3日後。
☆尿量が正常でも、以前より3割以上減っているのが2日以上続いているなら、点滴量や食事量を見直す。
☆尿量減少時は、点滴量を見直して明らかな脱水あれば補液する。それ以外はラシックス1A静注で対応する(2A1日2回まで)。心不全や肝不全あれば尿量減少するがバソプレシン分泌低下により尿が薄く少なくなる。尿が濃く少ない場合は単純に脱水か、低Albにより膠質浸透圧の低下から血管内脱水になっている場合もあり、血管内脱水では安易に点滴を増量すると胸水が溜まって酸素化が悪くなってしまう。
cf)尿量減少時の対応
 ・尿色濃い+皮膚湿潤→点滴は絞り気味、SpO2低下あればラシックス1A
 ・尿色濃い+皮膚乾燥→点滴増量
 ・尿色薄い+皮膚湿潤→心不全、腎不全→SpO2低下あればラシックス1A
☆尿量減少時は、腹部エコーで水腎症ないか確認し、溢水か脱水かの評価するためIVCを測定する。心臓から2cmのところで測定し、プローブを縦にして吸気時/呼気時ともに1桁mmなら脱水、ともに2桁なら多め、20mm超えてれば溢水。
☆明らかな腎不全なく多尿の場合は一過性かもしれないので経過観察。
☆補液が多くて多尿は当たり前で心配なし(多すぎて肺水腫なることあるが)、補液が少なくて乏尿は見逃すと腎不全になる。
☆軽度のCr上昇時は500ml1本程度を5日ほど補液すると良い(ヴィーンDなど)。
☆拘縮が強い場合、滴下調節しても体位によって点滴が3時間くらいで全部落ちてしまうことがある。
☆浮腫やSat低下ないか見る(発熱+Sat低下は肺炎、発熱なしのSat低下は胸水→点滴量多くないか)
☆状態が悪くなってくると多臓器不全から腎不全になり尿量が減少してくる→1号液を500-1000mlでよい。
☆DM持ちはインスリンスケール対応を忘れないように。
☆消化管手術後、ERCP、急性膵炎後など序々に食上げするときは常食になるまでスケール対応。
☆通常のスケール対応のインスリンの針は太いので、手持ちがある場合は速効型でスケール対応、持続型は通常通りの単位数にする。
☆指示出し後では当日昼の内服から始まるので、指示出した当日は昼夕、翌日から朝昼夕の処方にしておくと定期に合わせやすい。
☆誤嚥起こしそうな人(脳梗塞後、寝たきり、肺炎反復)ではST評価(VFなど)。
☆食上げの順は(おかず)ゼリー⇒ミキサー⇒きざみ⇒軟菜、(米)ミキサー⇒5分⇒全粥。
☆食種:DMはDM食(EC1400等)、ワーファリン服用中はワーファリン食で納豆禁止、心不全は塩分6g未満、貧血は貧血食、ERCP後は胆膵食(FC20-1400など)、胃切後は5回食、ステント留置後は5分粥まで。
☆入院が長期化すると嚥下機能も落ちるので高齢者は嚥下食で留めておく。
☆ムースで咽頭貯留あるときはミキサー食。
☆状態悪いときは嚥下機能も落ちるので、状態改善したら嚥下機能も再評価する。
☆食事量が半分切れば1-2本、3割切れば2-3本点滴を入れる。
☆感染では培養結果を必ず見て、必ずde-escalationすること。
☆潰瘍止血後は露出血管あるかないかをチェックする。
☆PEG/CV/腰椎穿刺/ERCP予定はワーファリンやアスピリン服用歴ないかチェック。
☆経口摂取不可ならCV/NG/PEG/看取り(点滴)のどれにするかIC。
☆退院近いなら帰宅先は自宅か施設か。独居か同居か。
☆シャントがある腕にルートをとるときは、シャントより末梢の尺側手背からとる(シャントより遠位でとってつぶれることは避ける)。
☆造影剤/ケモ投与後の穿刺部発赤は、次回投与前にサクシゾン100mg+生食100mlを投与する、投与スピードを倍にする、腕を変えるなど。
☆ユナシンやセフィロームで薬疹が出る時はアザクタム(1g+生食100mlを30分かけて1日2回)に変更する。
☆造影CTがどうしても必要だが、腎障害がある場合は、検査前に300ml(心不全あるときは150ml)生食をボーラス投与し、検査後は1ml/kg/hrで12時間生食投与。造影剤は50-100mlにする(ヨード含有量が300mg/dlの造影剤の場合)
☆プレドニン30mg/日以上投与中は、血糖測定、パリエット10mg1T/1x、ボナロン(BP:ビスホスホネート)35mg/1x起床時(第2,4週の金曜日)、5%ハリゾン(アンホテリシンB)シロップ含嗽液(480ml)1本1回20mLでうがい後に服用1日3回、ダイフェン(S400mgT80mg)1T/1x月水金投与、胸部レントゲンを週1回、β-Dグルカン、CMV-C7HRを2週間毎に測定する。
☆誤嚥性肺炎でも抗パ薬、チラージン、ステロイド、抗痙攣薬などはNGtubeから投与する。
cf)一般病棟入院時の説明:
①高齢者特有の危険性
・回復の遅れ、低下、食べられない、寝たきりになる→寿命では?
・そうなる場合にどうするか?点滴(末梢?中心静脈?)?経管栄養?自然(看取り)?
・ある程度元気になった場合は行き先の検討
②認知症の進行
③内臓器官の機能低下及び誤嚥性肺炎などの余病併発
④転倒、骨折の危険性
⑤突然急変する可能性(心筋梗塞、肺塞栓、誤嚥など)
・起こった場合の対処法(蘇生、自然に任せる)
・結論出るまでは蘇生を行う(30分ほど)が、回復の見込みはほとんどなし→脳死になる
・心マ、挿管をするかどうか
⑥せん妄になった場合は鎮静剤の使用、拘束、付き添いなど必要になることがある
cf)回復期リハビリ病棟入院時の説明:
・診療報酬がマルメになるため、薬剤を後発品に変更することあり。検査も必要最小限。
・急変が生じた場合は一般病棟や他の急性期病院へ転院が必要。
・夜間、救急時は当直医の対応になる。
・入院期間の上限あり。肺炎後などの廃用症候群は90日間。脳血管障害は150日か180日。この間に介護保険の変更手続きをとり、自宅の準備を整えたり、今後の行き先の検討をする。
・リハビリの成果が家族、本人の思うような場合でなかったとしても期限が来れば退院が必要。
・リハビリ処方箋に担当医、病名、発症年月日、入院年月日、経過、治療目標(拘縮予防、ADL改善など)を記載する。栄養管理計画書の病名、担当医名を記載する。リハビリ総合実施計画書の主治医、担当医、原因疾患を記載する。褥瘡対策に関する診療計画書の医師名、危険因子の評価を記載する。リハビリを保健請求するために、カルテに「目標設定等支援管理シートについて説明し、家族の了承を得た」と、記載すること。
☆入院時検査と指示
・血圧、SpO2、体温は1日1-3回測定、尿測は基本不要、体重測定 4週に1回測定など。
・入院時採血、検尿、胸腹部レントゲン、心電図、咽頭粘膜塗抹培養/感受性、持参薬継続かどうか、吸痰1日8回以上の指示。
☆入院時の異常時指示
(①が優先度高い)
注意)胃瘻の患者で発熱時にカロナール内服を指示すると、通常は病棟で粉砕し水に溶かして投与するか、50℃くらいのお湯に溶かして投与する(簡易懸濁)。あまり頻繁なようなら、カロナール粉砕を発熱時頓用5回分などあらかじめ処方しておく。クラビットはフィルムコーティングしてあり粉砕して溶かして注入すると詰まることがあるため、クラビット細粒を使う。
発熱時:
①カロナール200mg2T
②ロキソニン1T
③ボルタレン坐薬25mg(腎障害あるときはしない)
④メチロン250mg/1mL 1A筋注
cf)血圧低下時の解熱の基本は、①クーリング、②カロナール内服、③アセリオ点滴(1000mg/100ml1瓶→300mg/30mlを生食100mlなどに溶かして15分で点滴する)→アンヒバ坐薬はよさそうだが・・・(坐薬は嫌がることが多い)→ボルタレン坐薬やメチロン筋注は避ける!!
疼痛時:
①カロナール200mg2T
②ロキソニン1T
③ボルタレン坐薬25mg (腎障害あるときはしない)
④ペンタジン15mg 1A筋注
不眠時:
①ベルソムラ15㎎(長期間BZP内服時は持参のBZPを1週間ごとに0.5~0.25Tずつ漸減しながら併用)
(以下はせん妄時は中止)
②マイスリー10mg 0.5T
③②無効時はさらに0.5T追加
④レンドルミン0.25mg1T
嘔気時:
①アタラックスP1A静注
②プリンペラン1A筋注(もしくはプリンペラン1A+生食20ml静注もしくはメイン点注)
③ノバミン1A筋注
④ナウゼリン坐薬1個
不穏時:
①テトラミド1T(レスリン、デジレル、リフレックス、レメロン)内服
②リスパダール1包内服(1日3回まで、1時間あけて)
③セレネース1A筋注
④セレネース1A+生食100ml 100ml/hr入眠ストップ
⑤セレネース1A+ロヒプノール1A+生食100ml 100ml/hr入眠ストップ(BZPを半年以上服用し、休薬による反跳性不眠を疑うとき)
⑥家族Call
便秘時:
①摘便
②レシカルボン坐薬
③GE浣腸60ml
④プルゼニド2T
血圧200mmHg以上:
①アダラート5mg 1C内服
②フランドルテープ40㎎1日1枚(内服できないとき)

糖尿病

<糖尿病>
・「血糖高値+HbA1c(NGSP)6.5%以上」、「血糖高値+典型的DM症状」、「血糖高値+DM性網膜症」で確定診断。
・血糖高値:空腹時126、随時200、OGTT2時間値200以上
・どちらか一方の境界型の場合は、食事運動療法をしながら経過フォローし再検。
・急激に発症する1型DMは、HbA1cが8.9%未満、抗GAD抗体もほとんど出現しない。
・HbA1cのコントロール目標は、HbA1cが優6.2未満、良6.9未満、可7.4未満、不可8.4以上。8.4%以上が3ヶ月続くときは専門医紹介。
・高齢者のコントロール指標はHbA1c7-8.4%で良い。低血糖のリスクのほうが高い。
・その他のコントロール目標:BMI22前後、血圧130/80未満、LDL120未満、HDL40以上、TG150未満、nonHDLchoL150未満。冠動脈疾患ある時はLDL100未満、nonHDLchoL150未満
・食事指導のポイント:
①朝、昼、夜を規則正しく食べる。
②間食しない。
③腹8分目。
④食品の種類は多くして、バランスよく食べる。
⑤脂質と塩分を控える。
⑥食物繊維を多く含むもの(野菜、きのこ、海藻)をとる。
⑦「糖尿病食事療法のための食品交換表 第6版」を参照する。
・運動療法のポイント:
①散歩を、1回15-30分、1日2回、約10000歩/日、1週間に3回以上。
②インスリン療法中、SU剤内服中はスティックタイプの砂糖を携帯しておく。
③空腹時血糖250以上、尿ケトン陽性、眼底出血、腎不全、虚血性心疾患、骨関節疾患ある場合は運動は控える。
・薬物療法のポイント
①SU剤は腎機能低下あるときは容量調節する。
②ビグアナイド薬はCr1.2以上、75歳以上は推奨されない。
③単剤投与から開始し、1ヶ月ほどフォローし変更、追加する。
④食後高血糖ではグリニド系かαGIを使う。BMI25以上ではインスリン抵抗改善薬(ビグアナイド薬、チアゾリジン系)を使う。BMI22未満はDPP-4阻害薬、SU剤を使う。
⑤グリニド系、SU剤は低血糖、チアゾリジン系は浮腫や心不全、αGIは肝障害、ビグアナイド薬は乳酸アシドーシスの副作用に注意。
・インスリン療法の実際
 ・血糖降下薬の効果が乏しく、空腹時CPR0.5ng/ml以下ならインスリン導入を。
 ・ΔCPRが0.9ng/ml以下ならインスリン分泌能はないためインスリン療法
 ・ΔCPR=グルカゴン1㎎静注5分後の血中Cペプチド濃度-早朝空腹時の血中Cペプチド濃度
①1日のインスリン総量は体重kgあたり0.1-0.2単位と少なめから開始し、1-2単位ずつ増量する。
②同一部位に注射すると硬結ができて吸収が悪くなるので、注射部位はそのつど変更する。前回の注射部位から2cm程度離す。
③「超速効型を毎食直前3回+持効型を眠前」、「超速効型を毎食直前3回」、「混合型(超速効+中間型)を朝、夕食直前」
④GLP-1受容体作動薬の注射(ビクトーザ1日1回0.9mg皮下注、朝or夕)は専門医と相談。
・糖尿病性網膜症のフォロー間隔は、単純性初期は1年に1回、単純性中期は3-6ヶ月に1回、増殖前期以降は1-2ヶ月に1回。
・糖尿病性腎症の早期診断は尿中Alb排泄量で行う。30mg/gCr以上で早期腎症を疑う。
・糖尿病性神経障害は、両下肢の痺れ、アキレス腱反射低下、振動覚低下(振動させた音叉を内くるぶしに当てて10秒以内の振動覚消失を異常とする)など。アルドース還元酵素阻害薬のキネダックや疼痛にはリリカ、サインバルタ、NSAIDs、メキシチールなどを使う。
・糖尿病性足壊疽予防に、靴下を必ず脱いでもらって、水虫や靴擦れ、怪我がないかを見る。

脂質異常

<脂質異常>
・努力目標は、LDL160未満、HDL40以上、TG150未満。冠動脈疾患がある場合はLDL100未満、DM、CKD、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)がある場合はLDL120未満とする。
・LDLはFriedewaldの式、LDL=TC-HDL-TG/5から計算する。TGが400以上の場合や食後採血では、この式は使わずに、nonHDL=TC-HDLで代用する。
・nonHDLの努力目標は、冠動脈疾患がある場合は130未満、DM、CKD、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)がある場合はLDL150未満とする。
・生活習慣の改善
①禁煙する。受動喫煙を回避する。
②標準体重を維持する。
③肉の脂身、乳製品、卵、トランス脂肪酸が多い菓子類、植物油の過剰摂取を抑える。
④野菜、果物、未精製穀類、海藻、魚、大豆製品の摂取を増やす。
⑤6g/日未満に塩分制限する。
⑥アルコールの過剰摂取を控える(純アルコールで25g/日以下)
⑦有酸素運動を1日30分、週6日以上行う。有酸素運動はウォーキング、社交ダンス、水泳、サイクリングなど。
・薬物療法の注意点
①シンバスタチン、アトルバスタチンはチトクロームP450 3A4で代謝されるので、グレープフルーツを控える。
②陰イオン交換樹脂(クエストラン、コレバイン)は併用薬剤の吸収障害や脂溶性ビタミンの欠乏に注意。
③妊娠中はスタチンやフィブラートの投与は禁忌。
④高LDL、低HDLにはスタチン、陰イオン交換樹脂、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、高TGにはフィブラート系、ニコチン酸誘導体、多価不飽和脂肪酸を使う。
⑤スタチン製剤の横紋筋融解症(筋肉痛や脱力)、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の肝障害、CK上昇、フィブラート系の横紋筋融解症、ニコチン酸誘導体の顔面紅潮や頭痛、プロブコールのQT延長、多価飽和脂肪酸の出血傾向や発疹といった副作用に注意。

自己抜去(PEG/フォーリー/胃管/気管カニューレ)

<自己抜去>
☆PEGの自己抜去は瘻孔ができているので、再度入れなおすだけで良い。確認のためGIFやガストログラフィン30mlをPEGから注入し腹単を撮影する。
☆代わりのPEGがないときはフォーリーで代用する。
☆フォーリー自己抜去は尿道損傷あれば尿道口から少しずつ血尿が出てくる。尿道狭窄を起こすので再度留置しなおす(留置困難なら翌日泌尿器科consultする。無理に入れないこと)。血尿持続するときは貧血チェックと泌尿器科consult。
☆NGtubeやMtube(Magen tube/胃管、レビン)留置する時は座位、前傾姿勢で行う。(食事を食べるときの姿勢)
☆気管カニューレのカフ圧は25-30mmHg、測定できないときは耳たぶの柔らかさにする。レスピを使っている場合以外は抜けない程度でも良い。あまりカフ圧を上げすぎると気管粘膜の血流障害で潰瘍を起こすことがある(レスピにつないでいないのなら10ccでカフが全開になるのなら6-8ccくらいでもよい)。カフ付き>スピーチカニューレ>高研式>レティナの順に簡便。

高血糖

<高血糖>
☆デキスターでHi表示の場合は、意識レベル低下やバイタル変化なくDKAでなさそうならノボリンR10単位皮下注し、2時間後、デキスター再検でもよい。

CPA(ACLS)

<CPA(ACLS)>
☆原因:5H&5T(hypovolemia,hypoxia,hydrogen,hypo/hyperkalemia,hypothermia,tension pneumothrax,tamponade,toxin,thrombosis pulmonary,thrombosis coronary)→心エコーは胸骨のすぐ左で右上から左下に向けて斜めにプローブをあてると長軸像で見える。
☆アシドーシスではKが細胞内から流入するので、高K血症になる。採血時に高K血症だからといって、それが原因とは限らない。pHが0.1低下するとKは0.6mEq/L上昇する。
☆DNARかどうか家族が決められず、CPRを行って対光反射消失のまま心拍再開した場合は、ICした上で入院し挿管チューブに酸素を直接繋ぐようにする。
cf)挿管チューブについて
・径7.5mm、22cm口角
・入れ歯をとった時は挿管位置は口角20㎝でOK

cf)VfかAsystoleか判断できないとき:
ACLSの2015年度版のテキスト117ページより
「微細なVFであるのか心静止であるのか判然としない場合は、最初の処置として除細動は妥当である。」
「現時点では、除細動を遅らせて除細動の前にCPRを実施することの利点は不明確である。」
注)CPAの時の死亡診断書の書き方
・来院時、死後硬直や死斑など死亡徴候ありなら警察へ連絡し検視の上、犯罪性なければ死体検案書作成。
・死亡徴候なしなら心肺蘇生し、心拍再開なしならCT撮影(AI)し、警察へ連絡し検視の上、犯罪性なければ死体検案書作成。
・心拍再開ある場合は、CT撮影し死因を特定する。入院し、死亡した場合はCTで判明した病名にて死亡診断書作成。
・心拍再開ある場合は、CT撮影し死因を特定する。死因不明なら警察へ連絡し検視の上、犯罪性なければ死体検案書作成(犯罪性ありなら司法解剖になるので警察が引き取る)。
・AIは心拍再開のない場合のCT撮影。頭部、胸部、腹部の単純CTを撮影し、SAHあればクモ膜下出血、大量血胸や心タンポナーデあれば胸部大動脈瘤破裂、腹腔内出血あれば腹部大動脈瘤破裂と記載し、犯罪性なければ急性心筋梗塞(短時間)と書く。施設にて心肺停止になった場合、気管内に誤嚥物などなければ、ほぼ犯罪性はないので、このような扱いで問題ないようだ。
注)死亡宣告について
・死亡宣告は、①家族がそろうのを待って、②個室に移動してor他の患者さんがいないところで行うこと。
・来院までかなり時間がかかる場合も、家族の来院を待ってから死亡宣告を行う。
cf)ACLSアルゴリズム



血算の異常

<血算の異常>
☆貧血+MCV120以上+胃切⇒B12↓(悪性貧血)
☆貧血の程度のわりにMCV異常低値⇒サラセミア(HbA2↑)
☆貧血+長期IVH⇒Cu不足
☆貧血+意識障害⇒頭蓋内出血
注意)血便、血尿、吐下血なしや便潜血陰性なら頭蓋内出血を疑うこと(特に抗凝固療法中の場合)。
☆網赤血球10万/μL以上⇒急性出血か溶血⇒胃癌,大腸癌ないかCEA/便潜血/GF,CF
☆網赤血球5万/μL以下⇒骨髄低形成かFe↓B12↓葉酸↓腎不全
☆RBCのみ↑⇒ストレス/タバコ/脱水/SAS
☆Pltのみ↓⇒preDIC,ITP(PA-IgG),肝障害(トロンボポエチンは肝で合成),偽性(EDTA依存性⇒ヘパリン採血)
☆Pltのみ↑⇒(100万以上)本態性血小板増多症かCML、(100万以下)鉄欠/炎症/外傷/手術後/摘脾後/膠原病/癌/薬剤/運動/妊娠
☆WBCのみ慢性に増加⇒肥満や喫煙(分画正常),CML(骨髄球+や好塩基球分画↑⇒B12,好中球ALP),CLL(リンパ球分画↑)
☆WBC↓+異型リンパ球⇒ウィルス感染(HIV,CMV,EBV,パルボウィルス/軽度CRP↑,肝障害,Plt↓も伴うことあり),軽度なら風邪(マイコプラズマや百日咳もWBC軽度上昇、CRP↑、肝障害)
☆汎血球減少⇒慢性なら再生不良性貧血/MDS/DICあればAPL、急性なら敗血症/APL/血球貪食症候群(フェリチン/sIL-2R/VCA-IgM)。長期のIVHで汎血球減少を認める場合はCu,Vit12,葉酸の減少に注意する(メドレニックやビタジェクトを追加しよう)。
cf)WBCの正常値
WBC:3500~9000/μL
好中球(Neut):36~73%
単球(Mono):4~10%
リンパ球(Lym):19~48%
好酸球(Eo):1~10%
好塩基球(Ba):0~2%
異型リンパ球(Aty-Lym):0%

体重減少・食思不振、いつもと違う

<体重減少>
☆鑑別
・バセドウ病⇒頻脈、食欲低下なし、甲状腺腫大
・DM⇒口渇、多飲、多尿
・胃潰瘍
・炎症性腸疾患
・神経因性食思不振症
・薬物中毒
・アルコール中毒
<食思不振>
・高Ca血症も忘れずに!(ワンアルファなど使っていたら止めること)
cf)高齢者の食思不振
まずは急性の感染症を見逃さないこと!
・急性の感染症(発熱のない肺炎、尿路感染、胆嚢炎も普通にある)
・基礎疾患の増悪
・亜鉛欠乏など味覚障害
・うつ状態
・嚥下機能の低下→唾液反復嚥下試験(甲状軟骨を触知した状態で30秒間の空嚥下が3回未満で陽性)
・薬剤(ジキタリス中毒、Ca/ビタミンD製剤による高Ca血症)
・義歯不適合
・認知症、老衰
・結核(施設入所中なら特に見逃さないこと!)
・悪性腫瘍(どこまで調べるかは家族との相談になる)→体重減少、貧血の進行など
<いつもと違う>
まずは急性の感染症を見逃さないこと!
「急に元気がなくなった」「なんとなくいつもと違う」「ボーッとしている」「すぐ寝てしまう」「座っていて傾いてしまう」「横になりたがる」「麻痺はないのに急に歩けなくなった(脱力)」「ふらついてしまう」「珍しく転倒してしまった」「つじつまの合わないことを言い始めた(せん妄様症状)」「ケアをさせてもらえない(介護抵抗)」など
①まずは急性感染症を疑う,特に肺炎と尿路感染症。発熱ないこともある。
②急性胆嚢炎
③蜂窩織炎(爪白癬から)、褥瘡
④脱水、熱中症
⑤脳幹、小脳の脳梗塞
⑥デイサービスの疲れ
⑦便秘
☆高齢者の心筋梗塞、半分は無痛性。なんとなく元気がない、AST,ALT上昇、血圧低下など見られたら必ず心電図を。

麻痺

<麻痺>
☆腕や足を挙げれたらまずはMMT3/5、さらに握ったりできれば3+/5。
☆上肢Barreは1分待つこと。
☆単麻痺は肘を長時間ついていて橈骨神経麻痺などもある(脳梗塞が多いが)。他は手根管症候群=正中神経麻痺=猿手を忘れないこと。
☆親指の骨格筋萎縮は正中神経麻痺、他指の骨格筋麻痺の萎縮は尺骨神経麻痺(尺側前腕の筋萎縮も見られる場合は肘での障害)。
☆単神経障害も脳梗塞直後も深部腱反射は低下する(脳梗塞発症直後は弛緩性麻痺になるため) 。
☆頸椎症/頸髄症(安易に頸椎椎間板ヘルニアとしないこと。癌の骨転移やOPLLや脊髄腫瘍など脊柱管狭窄を来している場合もあるので)なら感覚と運動麻痺どちらも同程度に見られるはず(感覚だけ正常で純粋な運動麻痺ならまず脳梗塞)。
☆首を後屈させて痛み出ないか(Jackson test)、首を横にしていたみ出ないか(Spurling test)⇒ これらが陽性なら頸椎症/頸髄症。
☆椎体のpedicleという両端の丸い部分が消えていると骨メタかもしれない⇒肺癌/乳癌/前立腺癌精査。
☆発症1時間程度ならDWIにて明らかな梗塞巣みられないことも。
☆tPA適応が4.5時間以内なので、発症が明らかに4.5時間以上でなければ必ず脳外科コンサルトする。
☆HBOで滲出性中耳炎の可能性あり。HBO後の耳痛には注意する(あれば中止)。

呂律困難

<呂律困難>
☆この、あの、そので名前が出ないのは運動性失語。100-11は?と口頭で聞くともごもごするが、紙に100-11と書いて見せると紙に書いて答えられる(運動性失語)。

歩行障害

<歩行障害>
☆鑑別
・脳血管障害⇒脳出血/脳梗塞)
・慢性硬膜下血腫⇒数か月前に頭部外傷のエピソード
・正常圧水頭症⇒頭頂葉の脳溝が詰まっていて他がスカスカ=DESH、EvansIndex=両側側脳室前角間最大幅/頭蓋内最大幅>0.3
・パーキンソン病⇒足が出ない/声が小さくなった/動作緩慢/歯車様固縮
・頸髄症⇒首を痛めたエピソード、膝蓋腱反射亢進
・ALS/脊柱管狭窄症⇒力が入らない
・NMJ病変(MG)⇒眼瞼下垂
・脊髄小脳変性症⇒ふらつく
・脳梗塞後⇒痙縮はゆっくりと動かせば動く、拘縮は動かない(→脳梗塞後の痙縮が拘縮になれば不可逆的、腋が開かないのは大胸筋の拘縮でボトックス注射適応)

慢性咳嗽

<慢性咳嗽>
☆鑑別
・咳喘息、アトピー咳嗽⇒夜間増悪、ペット飼育ないか
・GERD⇒夜間増悪、脂肪食後、胸焼け/胸骨後面の焼けつくような痛み、肥満や便秘(→腹圧↑で逆流)
・慢性気管支炎⇒長期の喫煙歴
・百日咳、マイコプラズマ
・間質性肺炎⇒引越しやオウム飼育ないか
・慢性副鼻腔炎⇒悪臭鼻汁ないか
・結核⇒既往歴、体重減少、寝汗
・肺癌
・心不全⇒浮腫や息切れないか
・ACE阻害薬
・薬剤(咳嗽や間質性肺炎起こしやすい漢方が発症時期に処方されてないか)
☆昼間>夜間:心因性、鼻炎、副鼻腔炎
☆夜間>昼間:細菌感染(マイコ、クラミジア、百日咳、結核)、ウィルス反復感染、喘息、GERD
cf)結核を疑うとき:
・個室管理とし、入室時はエプロン、帽子、手袋、N95マスク着用。
・抗酸菌塗沫(チールネルセン)、分離培養(小川)、TB抗酸菌同定(PCR)、MAC抗酸菌同定(PCR)を3日間行うこと。喀痰が出ないときは、早朝のNGから胃酸を採取し行う。
・家族を含め、接触者はQFTを施行。